artscapeレビュー
松山賢「地図」
2009年07月15日号
会期:2009/06/06~2009/07/18
ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート[東京都]
ますます悶絶技巧の冴える松山画伯だが、今回は女性の肌にレース模様が重なる艶かしい絵。思い出すのはギュスターヴ・モローの描くサロメ、なかでも《刺青のサロメ》と通称される絵だ。これはサロメの白い裸身がアラベスクでびっしりとおおわれ、題名のごとくそれが刺青にも見えるというもの。実際には衣装の模様なのだが、それを描きかけのまま残すことで異様な効果を生み出した。モローはルネサンス以来対立する線と色という絵画の二項対立を、1枚の絵のなかで融合させずにあえて分離することで、線描重視の古典主義にも色彩重視のロマン主義にも与しないみずからの立場を表明したのだ。してみると、松山画伯もついに古典主義ともロマン主義とも訣別するお覚悟を決められたのだろうか。19世紀かお前は。
2009/06/30(火)(村田真)