artscapeレビュー

張照堂「歳月・一瞥」

2009年07月15日号

会期:2009/06/01~2009/06/12

PLACE M[東京都]

1943年生まれの張照堂(Chang, Chao-Tang)は台湾を代表する写真家の一人。日本でいえば木村伊兵衛と土門拳を合わせたような存在で、台湾では若い世代の尊敬を集めている。その彼の1970年代以降の代表作を集めた展覧会が、東京・新宿のPLACE Mで開催された。あまりまとめて作品を見る機会がない写真家なので、貴重な展示といえるだろう。
コントラストの強い、モノクロームのスナップショットに写っているのは、さまざまな場所で繰り広げられる、奇妙な仮面劇のような場面(実際に仮面をつけたり、厚く化粧したりした人物の姿が目立つ)である。その画面に封じ込まれたモノも人間も動物も、なんとも不可思議な気配を漂わせている。ユーモラスで、ちょっと不気味で、どこか肉感的でもあるそれら「異物」の存在感がとても魅力的だ。どういうわけか、会場の照明が観客の動きに反応して点滅するようになっていた。観客が作品に近づくとセンサーが働いてライトが点く仕掛けなのだが、それが作品の雰囲気に妙にはまって、仮面劇の効果を強めているのが面白かった。

2009/06/02(火)(飯沢耕太郎)

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