artscapeレビュー
山本太郎 展「ニッポン画物見遊山」
2009年07月15日号
会期:2009/05/22~2009/06/14
美術館「えき」[京都府]
「ニッポン画」を提唱し、2007年にはVOCA賞を受賞した山本太郎の10年の活動を回顧する展覧会。展示は学生時代の作品から最新作まで。訪れたときはちょうど本人による作品解説が行なわれていて賑わっていた。はじめは予定になかったそうだが、盛況につき追加で開催することになったのだという。山本太郎の「ニッポン画」は、技法や画材は伝統的なものだが、きっと普段着でふらりと行ける落語寄席のように、その場の雰囲気や、作品の好き嫌いという印象も含めた現在の「生」の感覚を楽しむものなのだと思う。古い作品から順に見ていくと、ユーモアが徐々に高度なものになっていることが解る。近作では、謡曲の一場面を題材にするなど、知識がないと解り難いものもあるのだが、かといって敷居が高い印象や気取りなどは相変わらずまったく感じられず、むしろ昔の作品よりも想像の余地が広がっている。展示を見ながら山本の解説にも耳を傾けていたのだが、「話し下手でして」という言葉に思わず笑ってしまった。いろんな意味で噺家のような作家だと思った。
2009/06/14(日)(酒井千穂)