artscapeレビュー
北島敬三「PORTRAITS」
2009年07月15日号
会期:2009/05/22~2009/07/05
Rat Hole Gallery[東京都]
1992年から続けられている北島敬三の「PORTRAITS」のシリーズ。特徴のない白いYシャツを身につけた男女のモデルの正面にカメラを据え、同じ距離、同じフレーミング、同じ白バックのフラットなライティングで撮影。それを横位置、ほぼ等身大の大きさに引き伸ばし、フレームにおさめて均等に壁面に展示する。今回のRat Hole Galleryの展示では、「中年の東洋人の男性」4点、「若い東洋人の男性」6点、「若い東洋人の女性」4点のポートレートが展示されていた。それらの写真は髪型や髪の分け目、顔の皺などが少しずつ異なっており、明らかに一定の期間を経て何度も撮影されていることがわかる。
この「PORTRAITS」のシリーズについては、今後は判断を保留していきたい。なぜなら、何を書いても北島があらかじめ設定した「鋳型」に押し込められてしまいそうだからだ。写真を見ているうちに、この取り澄ました画面全体に無数の白蟻をたからせて、ぼろぼろに穴をあけて崩したくなってきた。狭い通路に想像力を閉ざしてしまうようなこの種の強制力は、まったく「写真的」ではないと思う。北島は最近になって、「PORTRAITS」以前に撮影していたスナップショットの封印を解き、ふたたび積極的に発表しはじめているが、それはどういうことなのか。彼の写真家としての生命力がそれを求めはじめているのではないか。東京都写真美術館で開催される「KITAJIMA KEIZO 1975-1991」(2009年8月29日~10月18日)では、そのあたりを再確認してみたい。
2009/06/03(水)(飯沢耕太郎)