artscapeレビュー
さよなら ポラロイド
2009年07月15日号
会期:2009/06/16~2009/06/27
ギャラリー井上[大阪府]
昨年、ポラロイドフィルムの製造中止と言うニュースが伝わったとき、ショックを受けた人も多かっただろう。あの独特の質感、すぐに結果が見られるという特徴を持つポラロイドは、写真家たちの創作意欲を大いに刺激してきた。日本でも荒木経惟、森山大道などがユニークな作品を発表している。映像作家で多摩美術大学教授の萩原朔美もポラロイド愛好家の一人で、製造中止の一報を聞いて「何かひとつ時代の終焉を告げる木霊」を感じとり、「消え去るフィルムにさよならを言うために」と展覧会を企画した。昨年10月に、東京・阿佐ヶ谷のギャラリー煌翔で、27人が参加して第一回目の「さよなら ポラロイド」展を開催。今年は6月6日~14日の京都展(カフェショコラ)に続いて大阪展も開催された。その間に参加者は55名になり、最終的には100人にまで増やす予定だという。
萩原が教えている多摩美術大学の関係者である鈴木志郎康、高橋周平、港千尋、石井茂、神林優らに加えて、榎本了壱、森山大道、山崎博、屋代敏博、鈴木秀ヲなど出品者の顔ぶれもなかなかユニークである。実はぼく自身も「きのこ狩り」というちょっと変な作品を出品している。どうやらポラロイドには、撮り手を面白がらせ、エキサイトさせる不思議な力が備わっているようだ。全体的に遊び心を発揮した作品が多くなってくる。ポラロイドフィルムの存続を望む声は世界中で高まっており、最新情報によると、どうやらアメリカのグループがオランダの工場を買収し、2010年中にポラロイドの発売をめざすプロジェクトを展開中という。そうなると「こんにちは ポラロイド」展も企画できるのではないだろうか。
2009/06/27(土)(飯沢耕太郎)