2021年12月01日号
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artscapeレビュー

秦雅則「シニカル」

2010年06月15日号

会期:2010/05/04~2010/05/09

企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]

秦雅則は昨年来、自身もメンバーのひとりである企画ギャラリー・明るい部屋で「ネオカラー」「キーキーなく悪魔」「角死」「死角」といった個展を次々に開催して来た。これらを元にして、東京都写真美術館の「写真新世紀2009」の会場で開催された「幼稚な心」展の成果を加えて会場を構成したのが、今回の「シニカル」展である。
会場の中央に机が置かれ、そこに写真の束がいくつか置かれていて、それぞれの束には、以下のようなキャプションが付されている。「他人」「数多くの他人の中から選択された44名の他人」「知人と友人」「愛してると言ってほしそうな知人と友人(その人の目は本人のもの)」「知人と友人と私が混在している知人と友人と私(私、もしくは他人の身体の一部が移植されている)」「知人と友人によって撮られた私」。写真には着色されたり、合成などの加工が施されたりしたものはあるが、おおむね何の変哲もないスナップ写真の集積である。だが、写真の束を手にとって、めくりながらつらつら眺めていると、何かしら吐き気のようなものがこみ上げてくる。その「実存主義的」な感情がどこに由来するのかはわからないが、写真と写真の間からこみ上げてくる気持ち悪さはただ事ではない。
秦の写真作品は、今回の展示もそうなのだが、一見荒っぽく、雑なものに思える。だが、写真展のタイトルや作品に付されたキャプションを見てもわかるように、緻密な思考と丁寧な作業工程によって練り上げられている。そのユニークな仕事ぶりは、もっと注目されてもよいのではないだろうか。

2010/05/06(木)(飯沢耕太郎)

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