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artscapeレビュー

集合住宅物語

2010年06月15日号

発行所:みすず書房

発行日:2004年3月1日

千葉大学の岡田哲史研究室主催の千葉大学建築レクチュアシリーズにて、植田実氏と同席する機会があり、その機会にと思って本書を手にとった。350ページの分厚い本。全ページの半分近くが、鬼海弘雄による豊富なカラー写真。この写真の量は尋常ではない。集合住宅物語とはよくいったものだ。植田のテキストはいわゆる一般的な建築的記述から、ぐいぐいと集合住宅における生活そのものに入り込む。「歴史」ではなく「物語」として、個々の集合住宅を描き出す。だから写真も竣工時のものではない。人や生活の風景がある、生きられた集合住宅の写真である。戦前と戦後、同潤会アパートから代官山ヒルサイドテラスまで、40近くの集合住宅が、植田の目で描き直される。一般的な建築本に慣れていれば慣れているほど、建築における「生活」をあぶり出す本書の描き方は、新鮮に見える。

2010/05/13(木)(松田達)

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