2021年12月01日号
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artscapeレビュー

彦坂尚嘉+五十嵐太郎+新堀学『空想 皇居美術館』

2010年06月15日号

発行所:朝日新聞出版

発行日:2010年5月30日

美術館・美術批評家の彦坂尚嘉が約10年前から提案していた「皇居美術館空想」の書籍化である。彦坂尚嘉、五十嵐太郎、新堀学の3人が著者であるが、辛酸なめ子、藤森照信、暮沢剛巳らによる寄稿もあり、シンポジウムや座談会では、政治学者の御厨貴、原武史、政治活動家の鈴木邦男、社会学者の宮台真司が加わるなど、執筆陣も豪華だ。筆者は直接彦坂氏から皇居美術館の話はよく聞いていたが、あらためて本書を読むと、特にシンポジウムと座談会の記録は圧巻であり、まさに「皇居」とは、さまざまな分野の人たちが議論を繰り広げることのできる巨大な「敷地」であったことを実感する。馬鹿げた提案ではなく、シンポジウムでは過去の天皇制に関する議論、歴史、また皇居の空間史などを追っているが、提案の不自然さはまったく見えてこない。むしろこれだけ議論を誘発する優れた提案だといえるのではないか。もちろん本になるまで構想から10年もかかっており、出版できたこと自体が快挙だと言えるだろう。タブーに触れるのではないかと、こわごわと眺めている人がいれば、手にとって読んでみるとまったくその印象が変わる本であろう。

2010/05/10(月)(松田達)

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