2021年12月01日号
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artscapeレビュー

富谷昌子「みちくさ」

2010年06月15日号

会期:2010/05/11~2010/06/12

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

東京・京橋のツァイト・フォト・サロンでは、時々思いがけない新鮮な作風の若手写真家の展覧会が開催されることがある。今回の富谷昌子の「みちくさ」もそんな展示。故郷の青森を6×6判のカメラで撮影した、どちらかといえば古風な印象を与えるモノクローム作品が並ぶ。だが、その何枚かに写っている鳥、犬、山羊などの動物、とりわけ馬の写真が素晴らしい迫力で、見る者を異界に誘い込む強い力を発していた。同じ昌子という名前の小栗昌子が撮影する岩手県・遠野の情景もそうなのだが、東北地方の風土に潜む魔のようなものが、若い女性写真家の鋭敏なアンテナによってとらえられ、引き出されているのかもしれない。
もっとも、見る者を引き込んでいく力を備えた写真だけではなく、凡庸なものもかなり含まれているので、展示作品の選択にはもう少し注意深さが必要だろう。まっすぐに、どちらかといえば生真面目に被写体に向かう姿勢は悪くないが、のびやかな開放感に乏しく、固く縮こまっているように見える写真も少なくない。そのあたりを考えていけば、さらなるスケールの大きさが期待できるのではないだろうか。動物だけでなく、水たまりに映る樹木の影にピントを合わせた写真など、心理的な陰影を取り込んだ作品も気になった。自分でも分けがわからない衝動に突き動かされて撮影した写真を、もう少し増やしてもいいかもしれない。

2010/05/13(木)(飯沢耕太郎)

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