2019年09月01日号
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artscapeレビュー

生誕150年記念 アルフォンス・ミュシャ展

2011年04月01日号

会期:2011/02/05~2011/03/21

堺市博物館[大阪府]

チェコ出身の画家、アルフォンス・ミュシャの生誕150周年を記念して開催された回顧展。ミュシャがフランスにおけるアール・ヌーヴォーの代表的作家として活躍をする「パリ時代」と、その後の滞在地となった「アメリカ時代」、祖国に帰ってライフ・ワーク《スラブ叙事詩》に取り組むことになる「チェコ時代」という三部構成で、初期から晩年にかけての作品約170点が展観された。この区分のなかで、短い活動期間でありながら、非常に際立った作品群を残したのが、デザイナー時代のミュシャだ。本展ではその嚆矢となったサラ・ベルナールのポスター作品をはじめとして、各種装飾パネルやモエ・エ・シャンドンのメニュー、ビスケット缶などベル・エポック期の華やかな風俗をしのばせるもの、デザイナー向けの図案集『装飾資料集』に至るまで、アール・ヌーヴォーの豊かな作例を見ることができる。魅惑的な女性像・渦を巻きながら流れ出す髪・意匠を凝らしたローブの流麗な襞・顔周りの光輪のモザイク状装飾やアラベスク模様・繊細な色調が創りだす「ミュシャ様式」は、アール・ヌーヴォーの隆盛を導いた。だが、ミュシャ作品の魅力はただそれだけに留まるものではない。その装飾文様が有する「象徴」の力がいかに強いものであるか。彼のグラフィック作品は、念入りに構想された構図のうちに、複雑な理念的象徴体系を包含しているのだ。このことは、ミュシャがゴーギャンと交友し、また神秘主義に没頭していたことを考えれば不思議ではない。アール・ヌーヴォーの巨匠としてのミュシャのポスター芸術は、装飾性・諸芸術の統合・象徴主義・綜合主義に特徴づけられる世紀末芸術の様相に照らしてみれば、新たな魅力を発見できるだろう。国内最大のミュシャ・コレクションで知られる堺市のこと、今後さらに個性的なテーマに特化した展覧会にも期待したい。[竹内有子]

2011/03/13(日)(SYNK)

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