2019年07月15日号
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artscapeレビュー

山本竜基 展

2011年04月01日号

会期:2011/01/26~2011/02/26

MIZUMA ART GALLERY[東京都]

細密な自画像を描く山本竜基の新作展。《熊野歓心十界図》をモチーフとした新作《地獄図》などを発表した。前回の個展と比べると、全体的に仏教的世界観が導入されているせいか、いつにも増して「救済」のニュアンスが強く感じられた。それは自画像であるがゆえに、基本的には山本自身の「自己救済」なのだが、山本の作品がおもしろいのは、それが山本個人を超えた厚みと幅を持っている点だ。人間の誕生から死にいたるまでの道のりを図案化した絵に描かれているのは、地獄に落とされる山本や鬼に拷問を受ける山本。彼らがいちように苦しみながらも、どこか楽しげにも見えるのは、みずからのキャラクターをいくらか戯画化して描いていることに加えて、山本自身がみずからの情けなさや非力さを肯定的にとらえていることに由来しているように思われる。だからこそ、私たちはそこに自分の情けなさや非力さを見出し、ある種の救いを得ることができるのだろう。世俗を超越した神々しい神聖性ではなく、生活の俗塵がみなぎる神聖性。山本竜基が描き出しているのは、もしかしたらかつての神が死んだ後、久しく待望されていた新しい神なのかもしれない。

2011/02/23(水)(福住廉)

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