artscapeレビュー

ラファエル前派からウィリアム・モリスへ

2011年04月01日号

会期:2011/02/25~2011/03/27

美術館「えき」KYOTO[京都府]

ラファエル前派兄弟団とそれに続く第二世代のウィリアム・モリスやエドワード・バーン=ジョーンズらを中心に、彼らの絵画と装飾芸術のなかに通底する、諸芸術の統合への志向に照明を当てた展覧会。「ラファエル前派」を狭義にではなく、「ラファエル前派主義」ないしは「ラファエル前派に関与/と共通点をもつ芸術家たち」という広い意味に解釈し(一般に唯美主義とされる作家たちの作品までをも含めているところが興味深い)、アーツ・アンド・クラフツ運動に代表される、19世紀後期の英国芸術の潮流を概観している。同運動は、モリス・マーシャル・フォークナー商会の設立以前、モリスとバーン=ジョーンズらによる家具製作に端を発している。だが、ラファエル前派のメンバーたちは画家が本業でありながら、格下と見なされていた装飾芸術を自ら製作しつつ、純粋美術と装飾芸術を再び一体化しようとする点において、モリスらのアーツ・アンド・クラフツ運動が継承する反アカデミズムの根幹を成していた。本展に出品された絵画の「額縁」には、彼らの手で製作されたものがあるが、その思想の一例ともいえよう。絵と額縁は調和し、両者が協力し合って共に輝きを増している。また、油彩画のなかに描かれた装飾芸術が、観者にリアリティをもって迫ってくる理由もそこにある。今回の展覧会の見どころは、バーン=ジョーンズが人物を、ヘンリー・ダールが花・地面のデザインを行なったモリス商会の《タペストリー:東方三博士の礼拝》(251×373cm)。モリスがデザインした《ステンドグラス:シンバルとリュートの奏者》もまた素晴らしい。モリスたちの装飾芸術は、彼らの制作に対する信条と態度、その誠実でいて清らかな美によって、私たちを惹きつけてやまない。しばし時を忘れて見入った。[竹内有子]

2011/03/18(金)(SYNK)

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