2019年07月15日号
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artscapeレビュー

大倉摩矢子「Mr. 」(『奇妙な物質のささやきII O』)

2011年04月01日号

会期:2011/04/17

テルプシコール[東京都]

予定されていた公演が軒並み延期や中止になっている状況があり、まだまだ「観劇を楽しむ」ムードが復活していない個人的な事情もあるなかで、プレビューを書くのはとても難しいのですが、1本お勧めを。『奇妙な物質のささやきII O』という企画で、大倉摩矢子が踊ります(大倉摩矢子「Mr. 」、4月17日@テルプシコール)。大倉は、若手舞踏家のなかで観客の目を釘付けにできる力をもった一人。ゆっくりと20分かけて前に進むというただそれだけで、十分見応えのある時間をつくってしまう逸材。見て損はありません。この企画もそうなのですが、震災のこの状況で、舞踏系の作家たち(大駱駝艦や大橋可也もかつて舞踏家・和栗由起夫に師事していたことがある)がしぶとく上演を続けていて励まされます。今回のとくに原子力発電所の事故によって、ぼくらがいかに危ない装置に頼って生きてきたかを痛感させられていますが、いっそ、作家たちは、電力会社に頼らない公演の可能性を模索してみてもよいのではないでしょうか。かつて唐十郎は、テント公演の際に、自転車で自家発電して上演したと聞きます。そんな上演のシステム自体を自作する(そうしたことも含めて演劇とみなす)作家がでてきたらいいのに、と夢想します。こんな状況だからこそ発揮される創造性とはいったいどんなものなのか、とぼくは作家の皆さんに猛烈な期待を寄せています。

2011/03/31(木)(木村覚)

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