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artscapeレビュー

悪魔を見た

2011年04月01日号

会期:2011/02/26

丸の内ルーブル[東京都]

復讐は可能か。打ち振るわれた暴力に相応する暴力を敵に打ち返すことはできるのか。しかも、新たな苦しみと哀しみを生むことなく、復讐の応酬に終わりを告げるかたちで。キム・ジウン監督による本作は、この人間にとって根源的な問いを突き詰めた意欲作。しかし、この映画はその野心を実現させるには少々詰めが甘すぎた。殺人鬼を演じたチェ・ミンシクの演技は文字どおり鬼気迫るもので見応えがあるし、この猟奇犯に妻を惨殺された主人公のイ・ビョンホンが一気に復讐を果たすのではなく、GPSを内臓したカプセルを殺人犯に服用させ、監視と追跡を続けながら、悪事を働かせようとするたびにそれを暴力的に阻害するという復讐のかたちは、たしかに一理ある。しかし、主人公の捜査官と妻の関係が十分に描写されないまま妻が惨殺されてしまうので、残虐非道な描写に嫌悪感が募ることはあっても、この悲劇に感情移入することがまったくできない。2時間を超える全体の尺も長すぎで、編集も甘い。イ・ビョンホンの演技もいつもと同じだし、後半のカーチェイスのシーンはまるで「アイリス」のようだ。細部の綻びが、映画が志す構想を台無しにしてしまっているのである。綻びを修繕することができていれば、復讐は決して可能ではないことの哀しみを象徴的に描いたラストシーンも、今以上に効果的だったはずだ。

2011/03/01(火)(福住廉)

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