2019年09月15日号
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artscapeレビュー

GONZO─ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて─

2011年04月01日号

会期:2011/02/19

新宿シネマート[東京都]

「ニュー・ジャーナリズム」のトム・ウルフによって「ゴンゾ・ジャーナリズム」と称されたハンター・S・トンプソンのドキュメンタリー映画。対象との一定の距離を保ち、客観的な報道を心がける正統的なジャーナリズムとは対照的に、トンプソンが成し遂げたのは対象の只中にみずから没入して内側から記述する方法だった。暴走族に参加したり、保安官の選挙に立候補したり、トンプソンの「ジャーナリスト」らしからぬ履歴は、たしかにおもしろい。ただ、トンプソンについてのドキュメンタリー映画であれば、当然そのようなゴンゾの方法を踏襲するのかと思いきや、ドキュメンタリー映画としてはいたって中庸なところが残念といえば残念だ。疾走するバイクに同伴するかのようなスピード感あふれる編集は近頃のドキュメンタリー映画の定番と化しているし、とくに緩急も抑揚も工夫されていないから、逆に愚鈍な印象を覚えてしまう。むしろ注目したのは、トンプソンが攻撃的に批判の矛先を向けた当人たちがインタビューに応えていたこと。これは、このドキュメンタリー映画の成果というより、むしろアメリカの政治家の懐の深さを物語っているが、ひいては「ジャーナリズム」を育む土壌のちがいをも暗示していた。ゴンゾをおもしろがる風土がやせ細っていくと、おそらく世界はますます退屈になってゆくにちがいない。

2011/03/07(月)(福住廉)

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