artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

六本木アートナイト2012

会期:2012/03/24~2012/03/25

六本木ヒルズ+東京ミッドタウン+国立新美術館など[東京都]

ウチの裏庭が騒がしいのでなにごとかと思って下界に下りてみたら、「六本木アートナイト」をやってるではないか。昨年は震災の影響で中止になったからな。ヒルズ方面では、歯車で回転するチェーンで「六」「本」「木」を表わしたタムラサトル、赤い靴やボタンの映像を地面に映し出した志村信裕、スクリーン上の迷路を見ながら目隠しした人を誘導するゲームの泉太郎らが出品。アリーナには赤い水玉模様の巨大な《ヤヨイちゃん》が鎮座している。いやそれにしてもスゴイ人出だな。ミッドタウンに行くと、芝生広場に提灯を並べ、中央にジャッピーを祀った祭壇が置いてある。もはやジャッピーは日本の神か。ガレリアには高さ10メートルを超すバルーン製の超巨大こけし《花子》がおっ立ってる。大きさでは《ヤヨイちゃん》に勝ったな。国立新美術館では開発好明が発泡スチロールで茶室を組み立てている。その開発と野田裕示が手がけたワークショップの成果を展示する納屋もあり、いい味出している。日没後、人通りの多い屋外で展示するという条件から、おのずと光りもの、鳴りもの、メガものばかりとなった。

2012/03/24(土)(村田真)

4人展──うつろう(北川安希子、塩賀史子、福村真美、山本恵)

会期:2012/03/16~2012/03/25

ギャラリー唐橋[滋賀県]

北川安希子、塩賀史子・福村真美・山本恵の4人展。彼女たちに共通するのは、植物や自然の風景に目を向けた絵画作品を制作していること。塩賀の描いた夕刻の景色、鳥取砂丘をモチーフにした福村の作品、山本の大作、北川の細やかな表現、どれも美しい作品ばかりで、移ろう季節と自然の様子の変化を丁寧に観察する作家たちのまなざしがじんわりと感じられる展覧会だった。会場は京都や大阪の画廊などに比べると広く、天窓から射し込む光の加減で作品の表情が緩やかに変わる様子も楽しめる空間。この4人の展覧会は2年前にも開催されたのだが、今後も続けていきたいという。次回も楽しみにしている。

2012/03/24(土)(酒井千穂)

ロベール・ドアノー「Rétrospective」

会期:2012/03/24~2012/05/13

東京都写真美術館 地下1階展示室[東京都]

ロベール・ドアノーといえば、なんといっても《市庁舎前のキス》(1950)だ。今回の回顧展のチラシに使われ、会場となった東京都写真美術館の外壁にも、この代表作が巨大なサイズに引き伸ばされて飾られている。だが、日本ではおそらく初めての200点を超える規模の展示を見ると、ドアノーが決していわゆる「パリ写真」の範疇におさまる写真家ではないことがよくわかる。「パリ写真」というのは、比較文化の視点から写真を読み解いた今橋映子が『〈パリ写真〉の世紀』(白水社、2003)で提起した概念で、ジャーナリスティックに垂れ流しされたパリのイメージ、すなわち「パリの男女、犬や猫、子供たちを、ユーモアや優しさを込めて映し出す」写真の総称である。ドアノーの「市庁舎前のキス」は、その「パリ写真」の典型として絵葉書やポスターなどに無数に複製され、今なお流布し続けている。
にもかかわらず、写真家としてのドアノーの本質は「パリ写真」とはかけ離れたものであることが、今回の展示を見てよくわかった。彼は「ユーモアや優しさ」どころか、シニカルな批評精神の持ち主であり、被写体をクールに突き放す醒めた視線を保ち続けた写真家だったのだ。それは「市庁舎前のキス」が普通考えられているような偶然撮影されたスナップショットではなく、『ライフ』誌の特集のための完全な演出写真であることでもよくわかる。ドアノーはこれと狙った場面を撮影するために、いわゆる「やらせ」を仕組むことに対してまったく躊躇することがない。彼は決してナイーブな写真家ではなく、むしろ経験を積んだプロフェッショナルであり、その技術に誇りさえ抱いていたことが、写真から見えてくるのだ。被写体に対する批評的な距離感がドアノーの写真の最大の特徴であり、その小気味よい職人的な映像の切れ味こそ今回の写真展の見所といえるだろう。
1980年代になって、ドアノーはDATAR(国土整備庁)の依頼で、彼のメイングラウンドであったパリ郊外をカラー写真で撮影した。特別展示されていたその写真群を見て、なんともクールで素っ気ない(同時期にアメリカの写真家たちが撮影した「ニュー・カラー」の写真を思わせる)そのたたずまいにこそ、ドアノーの地金が表われているのではないかと感じた。

2012/03/24(土)(飯沢耕太郎)

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「鉄川与助の教会建築─五島列島を訪ねて─」展

会期:2012/03/08~2012/05/26

LIXILギャラリー[東京都]

LIXILギャラリーの「鉄川与助の教会建築」展は、近代日本におけるキリスト教受容とその変形として出現する教会の事例を紹介したものだ。以前、筆者が結婚式教会を論じていたときに、いわゆるウェディング・チャペルと鉄川の教会を比較したが、本物の教会かどうかで分けず、様式の変容としてこれらを検証すると、さらに興味深いだろう。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

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東洋大学工学部建築学科2011年度卒業設計展

会期:2012/03/24~2012/03/31

LIXIL:GINZA 7Fクリエイティブスペース[東京都]

東洋大学の卒業・修士設計の展覧会とあわせて開催された講評会に、末廣香織とともにゲストで参加した。選抜された作品を見ながら、全体として明快な特徴があることに気づく。個人的な風景やこだわりからスタートしつつも、ごりごりのパラメトリック・デザイン、フォルマリズムが展開しているのだ。ちなみに、五十嵐賞としては、学内受賞した人以外を対象とし、建物には手をつけず、内外の境界線となる塀のあり方のさまざまな可能性を示唆した塩原和記の「ガク都の牢」と、古典的な身体=建築論の系譜を踏まえつつ、アニメ絵少女の身体を建築化して秋葉原に挿入する嶋田裕紀の「美少女建築」を選んだ。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

2012年04月15日号の
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