artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

南川祐樹建築設計事務所《透明な地形》

[愛知県]

竣工:2007年11月

岡崎にて、南川祐輝が設計した住宅「透明な地形」を見学した。9分割された矩形の屋外作品である佐久島のおひるねハウスを見て依頼があったらしく、その空間コンセプトを住宅に展開したものである。線路沿いで、くの字型に屈曲するヴォリュームに4つのキューブが貫通するような形式をもつ。1つがくり抜かれたテラス、2つが個室、残りの1つが浴室である。地形を反映した大階段や高い天井など、空間を使う楽しさが感じられる家だった。

2012/03/31(土)(五十嵐太郎)

栗原健太郎+岩月美穂 studio velocity展「fluctuationーゆらぎ」

会期:2012/03/31~2012/04/08

masayoshi suzuki garllery[愛知県]

masayoshi suzuki galleryにてstudio velocityの「 fluctuation (ゆらぎ)」展のオープニング・トークに参加した。1階はフィルムによるゆらぐ建築スケールの構造体が、さまざまなにまわりの環境を映しだす。地下は床の傷をランドスケープに見立てた超微細な模型である。石上純也事務所出身の若手ユニットらしく、建築とアートを架橋する作品であり、とてもフラジャイルな感覚をもつ。現在、書類審査の結果、今年のヴェネチアビエンナーレ国際建築展に参加する可能性があり、国際展のデビューも期待されている。

2012/03/31(土)(五十嵐太郎)

プレビュー:熊谷守一 展「小さな画面に無限の世界」

会期:2012/04/14~2012/05/27

伊丹市立美術館[兵庫県]

草花や小さな虫、猫、鳥などを鮮やかな色彩と明瞭な輪郭線で描いた熊谷守一。本展には、代表作と新たに発見された作品を含めた油彩画約144点、日本画26点、書10点が展示される。熊谷守一の油彩画の多くは四号の板(約24×33cm)に描かれているが、その小さな画面には無限に広がる世界が表現されている。「モリカズ様式」と呼ばれる独自の作風を約70年間の長い画業のなかで確立した作家の人物像にも迫る展覧会。

2012/04/15(日)(酒井千穂)

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プレビュー:すべての僕が沸騰する──村山知義の宇宙

会期:2012/04/08~2012/05/13

京都国立近代美術館[京都府]

ベルリンでダダや構成主義などを吸収し「マヴォ(MAVO)」や「三科」といったグループの活動を通じて日本の近代美術に影響を与えた村山知義(1901-1977)。本展は、油彩、コラージュ、版画や雑誌『マヴォ』のほか、自ら設計し新興芸術運動の拠点とした自邸兼アトリエ《三角の家》の室内装飾や建築、舞台美術、ポスターなど、1920年代の美術の仕事を中心に村山知義の多彩な仕事を紹介する。挿絵作家「Tom」としても晩年まで活躍した村山。会期中には、彼が手がけた絵本の世界にふれながら物語をつくる子どもたちのためのプログラムや、記念講演会なども開催される。

2012/04/15(日)(酒井千穂)

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カタログ&ブックス│2012年4月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

Creativity Seen/Unseen in Art and Technology
A compendium of media art and performance from YCAM: 2003-2008

発行:山口情報芸術センター[YCAM]
発行日:2011年3月31日(2012年3月より販売)
サイズ:B5判 240頁
価格:3,675円(税込)

2003年11月の開館以来、メディアテクノロジーと身体を巡る新しい表現を追求する山口情報芸術センター[YCAM]。アーティストの構想とその実現を担う専門性を持ち、それらを地方から発信する視点と、地域の文化に対する眼差しとともに生み出された作品の数々は、世界各地で巡回を続けています。本書では、開館から5年にわたって制作・発信したオリジナル作品を中心に、その活動の全貌を紹介します。アートの現在が、新たなメディアを創出する技術とどのように関わるのか、テクノロジーと社会との関係に、どうやって批評的に対峙するのか──。本書を通じ、次代に続く、想像の「環境/創発/公共性」のあり方を問いかけます。 [山口情報芸術センター資料より]



メグロアドレス──都会に生きる作家

編集:石崎尚
執筆:青山悟、今井智己、須藤由希子、長坂常、南川史門、保井智貴、田中功起、石崎尚
発行日:2012年2月7日
発行:目黒区美術館
価格:2,000円
サイズ:B5変 120頁

「メグロアドレス─都会に生きる作家」展(2012年2月7日〜4月1日、目黒区美術館)カタログ。目黒区に縁のある6組の若手アーティストの仕事を紹介。絵画、彫刻、写真、インスタレーションなど、多様な作品で構成される。出品作家は青山悟+平石博一、今井智己、須藤由希子、長坂常、南川史門、保井智貴。



アドルフ・ロース著作集1『虚空へ向けて』

著者:アドルフ・ロース
翻訳:加藤淳
監修:鈴木了二・中谷礼仁
書容設計:羽良多平吉@EDiX
発行:編集出版組織体アセテート
発行日:2012年4月1日
サイズ:210×130mm 304頁
価格:2,940円(税込)

ラディカルな近代建築宣言「装飾と犯罪」で知られる建築家、アドルフ・ロース(1870-1933)による、19世紀末ウィーン文化批評の全貌。全31編中27編本邦初訳。ドイツ語初版より訳出。解題2篇、200以上の詳細な訳注を付す。アドルフ・ロース全集発刊開始第1弾。[アセテートサイトより]



今和次郎「日本の民家」再訪

著者:瀝青会
発行:平凡社
発行日:2012年3月26日
サイズ:A5判 394頁
価格:3,360円(税込)

「九〇年前のあの民家たちはいま、どうしているのだろう──。」瀝青会は『日本の民家』に収められた四五件をさがして全国津々浦々、今日もアスファルトの上を行く。二〇〇〇日の旅が教えてくれたのは、うつろい、うつろわぬ、歴史の狭間にある民家・農山漁村・都市・人々の姿でした。[本書帯より]



浜からはじめる復興計画 牡鹿・雄勝・長清水での試み

編者:アーキエイド
発行所:彰国社
発行日:2012年4月30日
価格:2,000円(税込)
サイズ:B5判 128頁

昨年7月に行われたアーキエイドサマーキャンプや、東北大学での雄勝半島での活動、宮城大学中田研究室を中心とした南三陸町長清水での活動をまとめるだけでなく、建築家が何を思い、どう動いたかといったプロセスにも触れ、アーキエイドの活動をまとめた書籍という枠を超え、これから先、また東日本大震災のような災害に見舞われた場合の資料としても今後数多くの方々にご覧いただけるような本となりました。[ArchiAidサイトより]

2012/04/16(月)(artscape編集部)

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