artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

ユベール・ロベール「時間の庭」

会期:2012/03/06~2012/05/20

国立西洋美術館[東京都]

これは残念ながら期待はずれだったなあ。期待が大きすぎたかも。ユベール・ロベールは廃墟画で知られる画家で、フランス革命前後の動乱期にルーヴル宮の美術館管理官も務めた人。彼自身ルーヴル宮に住み、アトリエも構えていたため内部を熟知していたのだろう、美術館の改修計画図を何枚も描き、あろうことかその廃墟図まで残している。開館したばかりの美術館を廃墟にするか? この自虐(自ギャグ)精神は見習いたいものだ。近年の磯崎新や元田久治らによる建築の廃墟図も、元をたどればロベールに行きつくだろう。ところが、そのルーヴルを描いた絵が1枚もない。のみならず、ルーヴル美術館からの出品自体ない(寄託作品は1点ある)。そもそも出品作品の多くはフランス南東部のヴァランス美術館(閉館中)から来ており、しかもその大半は素描なのだ。油彩は西洋美術館や静岡県立美術館など国内から集めたもののほうが多い(蛇足だが、東京富士美術館の《スフィンクス橋の眺め》は見るからにヘタ)。よっぽどのロベール愛好家でない限り入場料1,300円は高い。

2012/03/23(金)(村田真)

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VOCA展2012

会期:2012/03/15~2012/03/30

上野の森美術館[東京都]

今年はいつになくヴァリエーションに富んでいて楽しめた。桑久保徹や小村希史ら厚塗りのペインタリー系は絵画の醍醐味を堪能させてくれたし、奥村雄樹や前沢知子による子どものワークショップの成果をちゃっかり作品化した寄せ集め画は、アートの将来を考えさせてくれた。もっとも破壊的だったのは、麻生知子と武内明子によるワタリドリ計画だ。ワタリドリ計画とは、このふたりが日本各地を旅して2人展を開いていくというプロジェクトで、今回出品されたのは、その旅の過程で生み出された「ワタリドリ通信」と132枚の「手彩色絵はがき」。つまり出品されたのはプロジェクトの副産物ともいうべきものであって、作品そのものではない。むしろプレゼンテーションの場というべきか。このテの「作品」が増えていくと「VOCA展」も変わらざるをえなくなるだろう。

2012/03/23(金)(村田真)

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東島毅「遮るものもないことについて──another」

会期:2012/03/15~2012/03/30

上野の森美術館ギャラリー[東京都]

こ、これはすごい、キャンバスがデカすぎてギャラリーに入らず、斜めに立ててある。もちろんそんなことはないだろうけど、でも本当にデカイの描きたいから描いてみたら入らなかった、としたら尊敬しちゃうけどな。

2012/03/23(金)(村田真)

入江早耶 展「デイリーハピネス」

会期:2012/03/02~2012/03/25

資生堂ギャラリー[東京都]

今年の「アートエッグ」第3弾。観音様の掛け軸の前に小さな観音像が置いてあるのでなんだろうと思ったら、掛け軸の観音様を消しゴムで消し、そのカスをこね上げて観音像をつくっているのだ。これはご苦労なこってすなあ。ほかの作品も同様のコンセプトに基づくが、資生堂のポストカードやファンデーションを使った作品が半分くらいあり、ちょっと宣伝臭がした。作家が望んだかどうか知らないけれど、いくら支援しているからといってここまで自社製品を使わせていいのかと気になった。

2012/03/23(金)(村田真)

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ホリー・ファレル「ブックショップ」

会期:2012/03/21~2012/04/14

メグミオギタギャラリー[東京都]

背表紙を向けた本を10冊(+両脇に数冊ずつ平積み)ほど、きっちりと描いている。絵ごとに古典文学、料理本、児童書などに分けられ、タイトルや出版社名まで読める。ゆるやかな正面性の美学。これほしいなあ……。

2012/03/23(金)(村田真)

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