artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

東京都美術館の記者発表会およびプレス内覧ツアー

会期:2012/03/29

東京都美術館[東京都]

改修工事がほぼ終わった都美術館で内覧ツアーが行なわれた。公募棟は内部の改装くらいだったが、企画棟のほうはほぼ全面建て替えとなり、1フロアが広くなった。天井高も3.2メートルから4.5メートルにかさ上げされ、エスカレータで上下移動できることに。つまり団体展は現状維持、企画展はますます発展、ということかな。あとはどこの美術館でもやってることだが、レストランやカフェやミュージアムショップの増床と中身の充実だ。

2012/03/29(木)(村田真)

国際芸術祭 あいちトリエンナーレ2013 記者発表

会期:2012/03/29

愛知芸術文化センター 12階アートスペースA[愛知県]

朝からあいちトリエンナーレ2013の有識者懇談会、昼から知事が座長となって運営会議、そして記者会見という長い一日だった。今回の発表では、少し展示の枠組みが見えてきたこともあり、プレスから具体的な質問が多く寄せられた。建築に絡む開催概要のポイントは、以下のとおり。名古屋の美術館や長者町以外に岡崎も会場になったこと。キュレータチーム(リバプール・ビエンナーレの監督を長くつとめたルイス・ビッグス、住友文彦、飯田志保子、拝戸雅彦ほか)やパフォーミングアーツのプロデューサー陣(全体統括の小崎哲哉ほか)が決定したこと。現代美術の作家では、前回発表された石上純也らの四人に加え、新しく青木淳、打開連合設計事務所(台湾)、建築的な作品を手がけるリチャード・ウィルソン(イギリス)やウィット・ピムカンチャナポン(タイ)、ヤノベケンジなど、8組が紹介された。オペラの演出家は、東京大学の建築学科出身の若手、田尾下哲がつとめ、『蝶々夫人』を上演する。また建物公開を行なうオープンアーキテクチャー、建築マップの作成、各地にアートを届けるトリエンナーレ・トラックなどの新しい試みも行なう。

2012/03/29(木)(五十嵐太郎)

レオナルド・ダ・ヴィンチ「美の理想」

会期:2012/03/31~2012/06/10

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

日本で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」を成り立たせるには作品が1点あれば十分で、あとは周辺画家の作品や関連資料を集めてお茶を濁すのがフツーだが、今回はなんと3点も来ている。ただし3点とも習作みたいなモノクロームの小品だ。というといかにもショボく聞こえるかもしれないが、じつのところほかの画家の手が入ってるかもしれない大作より、こちらのほうがレオナルドの息づかいや手の痕跡が認められ、むしろありがたみが感じられるというものだ(そもそもレオナルドは《モナ・リザ》に代表されるように、描くことの痕跡を極力消そうとした画家だ)。とくに今回は目玉の《ほつれ髪の女》より、2点の《衣紋の習作》に惹かれるなあ。ほかにレオナルドの筆が入っている可能性が高い《岩窟の聖母》、弟子サライが師匠の絵を参考にして描いたとされる《聖母子と聖アンナ》、そして彫刻版やヌード版を含め20点にもおよぶ《モナ・リザ》のヴァリエーションなど、ミステリーじみた来歴もあってなかなか楽しめる。

2012/03/30(金)(村田真)

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杉本博司「ハダカから被服へ」

会期:2012/03/31~2012/07/01

原美術館[東京都]

最近ものすごいペースで飛ばしてる(でも本人は涼しい顔の)杉本博司だが、今回選んだテーマは「ハダカから被服へ」、つまり衣服。これはシャネル、サンローラン、川久保玲などのファッションを撮りためた「スタイアライズド・スカルプチャー」シリーズを中心とする展示だが、もちろんそれだけでは済まないのが杉本だ。衣服をテーマにするとは、いってみれば人類の歴史を振り返ること。そこまで大風呂敷を広げ、「ジオラマ」シリーズから「猿人」や「ネアンデルタール」、「肖像写真」シリーズから「マリー・アントワネット」や「ヘンリー8世」なども出る。いや写真ばかりではない。「杉本文楽曾根崎心中」のための人形と衣装や雷紋の能衣装といった自作の舞台装束、18世紀の女性の解剖図や戦前の「千人針」を描いた日本画など、彼自身の美術コレクションも出品される。その活動の多彩さと悪趣味スレスレの趣味のよさ(?)には舌を巻くが、それを「衣服」という1点に集約し並べ替えてしまう応用力(鷹揚力でもあるだろう)には驚かされる。でも杉本氏によれば、今回いちばん力を入れたのは庭の垣根だそうだ。なんだか粋な職人化しつつあるなあ。

2012/03/30(金)(村田真)

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MOTOKO「田園ドリーム」

会期:2012/03/28~2012/04/10

銀座ニコンサロン[東京都]

MOTOKOは2003年に刊行の『Day light』(ピエブックス)におさめた森の写真を撮影するために、初めて滋賀県を訪れた。琵琶湖の周辺の「里山の荒廃によって急速に失われていく日本の原風景」に強く魅せられた彼女は、2006年から取材・撮影し始めた。最初の頃は里山や棚田の風景、民間行事、祭りなど「ハレの日」の情景を中心に撮影していたのだが、次第に農家の暮らしに興味が移り、2008年から本格的にルポルタージュを開始する。その過程で、若手農家集団「コネファ」との協力関係ができて、展示やイベントを精力的にこなしてきた。現在は「田園ドリームプロジェクト」という名称で活動を展開している。
MOTOKOの写真は、まさに「日本の原風景」というべき琵琶湖の湖岸地域の自然、農業、祭事などを総合的にとらえており、気持ちよく目に飛び込んできて淀みがない。この地域の暮らしぶりを、明快なイメージでいきいきと浮かび上がらせているといえるだろう。ちょっと気になったのは、展示されている写真にキャプションがまったくなかったこと。むろん、写真家が被写体をどんな切り口で撮影しているのかを見せるのが眼目だから、余分なテキストを省くという選択はありえる。だが、たとえば祭りの演目、料理など生活の細部の情報は、観客にとって重要な意味をもつのではないかと思う。写真とテキストが一体化した展示を考えてもよかったのではないだろうか。

2012/03/30(金)(飯沢耕太郎)

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