artscapeレビュー
2014年02月15日号のレビュー/プレビュー
アンドレアス・グルスキー展
会期:2014/02/01~2014/05/11
国立国際美術館[大阪府]
2013年に東京(国立新美術館)で開催された写真家アンドレアス・グルスキー(1955- )の日本初の個展が大阪の国立国際美術館で始まった。今展はグルスキー自身が会場にて自ら厳選したという約50点で展示構成されている。展示数は東京会場よりも少ないのだが、その大型写真のスケールや構図、色鮮やかな作品の美しさが圧倒的でじつに壮観の眺め。見応えとその魅力を知るのに充分の内容であるしカタログも素晴らしい。会期は長いのでもう一度見に行きたい。
2014/01/31(金)(酒井千穂)
上田義彦「M. Sea」
会期:2014/01/21~2014/03/08
Gallery 916[東京都]
上田義彦の「Materia」シリーズも、森、川と続いて今回は海をテーマとしている。ピントを外した大画面の写真で「命の大元、Materia」を捉えるというもくろみは今回も貫かれているが、これまで以上に徹底したアプローチを見ることができた。10点の作品の画面の大部分は漆黒で、そこにほの白い飛沫と化した波と、岩のシルエットが微かに浮かび上がる。前にも指摘したことがあるが、上田のこのシリーズは被写体をMateria=物質として提示するあり方はむしろ希薄で、どちらかと言えば絵画性が強いように見えてしまう。だが、その方向性は、今回の作品で極限近くまで突き詰められている。19世紀~20世紀初頭のピクトリアリズムを志向する作品を巨大化した印象で、逆にその反時代的な姿勢が興味深かった。一点だけ、冬の日本海の荒海と岩礁を、ごく普通に撮影・プリントした写真が展示してあったが、その意図がよくつかめなかった。このままだと、他の作品の成り立ちを解説しているようにしか見えないからだ。
会場に併設するGallery 916 smallでは、同時に上田の新作「M. Venus」も展示されていた(5点)。こちらは「Materiaシリーズを撮り続ける中で私の網膜に時々出て来る遠い記憶の中の光景」である「森の中の女性」のイメージを再現した作品である。雪が降り積もる森の中に、赤いボートが置かれ、そこに金髪の裸体の女性の姿がぼんやりと浮かび上がる。その軽やかで官能的なイメージの飛翔が「M. Sea」とは対照的で、とても好ましいものに思えた。
2014/01/31(金)(飯沢耕太郎)
第8回 shiseido art egg:加納俊輔 展「ジェンガと噴水」
会期:2013/01/10~2014/02/02
資生堂ギャラリー[東京都]
加納が試みる手法やプロセスの先鋭性、それがさらに鋭くなっていることはもちろん興味深いが、天井高のあるギャラリーで彼が得たのは、その表現の自由さだと思う。写真だったものが石にプリント、それがベニヤとなり、尖った形に発展した。小品では彫刻的、オブジェクトとしての感が強かったが、巨大な作品に形成されることで、その様は、まるで自由に描かれたドローイングを見ているかのような印象に。写真が貼られた鋭角の板片が中央の穴を軸に回転しているという構造ものびのびしていて、これを描くための手法だったのではないかと逆に思うほどの躍動感が前面に出ていた。向かいに展示されていた路上に根ざしたスナップ写真作品(「ストリート感」は彼のモチーフでは重要なキーワードだと僕は勝手に思っている)も負けじと巨大化。“静”タイプと思っていた版作品がこんなにも空間を駆け巡る運動を生むとは。
2014/02/02(日)(松永大地)
プレビュー:CITY IN MEMORY──記憶の街
会期:2014/03/01~2014/03/22
堀川団地[京都府]
戦後、全国初の店舗付集合住宅であり、京町屋をモデルに設計された個性的な空間がかつては多くの人達の憧れだったという堀川団地。BEPPU PROJECTの山出淳也氏の指導のもと、12名のアーティストが企画運営に携わり、築60年以上というこの歴史ある団地を舞台に「場所の記憶」をテーマにした“体験の場”をつくりあげる。作家達は昨秋より団地に実際に滞在したり住民と交流をはかりながら、この団地の“記憶”を、それぞれに見つめてきた。開催期間中、団地のなかには彼らが触れてきた団地の“記憶”を集めた「記憶の部屋」と「記憶の倉庫」が出現する。1日1名のみ滞在できる「記憶の部屋」は完全予約制ですでに空きはないのだが、「記憶の倉庫」のほうは当日受付で(定員7名/各回約30分)体験できる。本プロジェクトの参加作家はAT PAPER(金成基、國政聡志、中望、三重野龍)、井上大輔、菊川亜騎、谷澤紗和子、谷本真理、野原万里絵、朴星桓、前川紘士、矢津吉隆。
2014/02/15(土)(酒井千穂)
プレビュー:ミヒャエル・ボレマンス展
会期:2014/02/20~2014/02/25
臨済宗 建仁寺塔頭 両足院 水月亭[京都府]
原美術館などでの展示も話題のベルギーの画家、ミヒャエル・ボレマンスが京都でも展覧会を開催する。「もしも圧倒的な技術、表現力を有し、異なる文化を背景にもつ現代アーティストが、寺社の襖絵や調度品を現地で制作すると、どのように心に伝わるのか?」。墨絵による作品を展開するという、またとない機会となりそうだ。
2014/02/15(土)(松永大地)