artscapeレビュー
2014年03月15日号のレビュー/プレビュー
ワンダーシード2014
会期:2014/02/01~2014/03/02
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
公募で選ばれた108点の展示即売会。10号以下の平面が対象で、価格も1,000円から35,000円までと安めの設定のせいか、ざっと見渡したところ7~8割が売約済み。いくらお買い得とはいえ、このご時世でこれだけ売れるとはリッパなもんだ。これはやはりオンライン販売が効いているのだろうか。しかしディスプレイの画像でどれだけ判断できるのか心配になるが、いわゆるペインティングよりイラストっぽい作品が売れてるところを見ると、さもありなんと思う。
2014/02/25(火)(村田真)
平成25年度第37回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展
会期:2014/02/20~2014/03/02
国立新美術館[東京都]
最初に入ったのは造形大。ここは絵画専攻なのに映像を使ったりインスタレーションしたり、相変わらずチャラチャラしてる。意外にも版画にいい作品が多いように感じたのは、相対的に絵画のできがよくなかったせいかも。女子美も個人的にブースを設けて内部に展示したり、作品を鉄格子で囲んだり、チャラい作品が多い。絵画がよかったのは多摩美で、全体にレベルが高く、学部も大学院クラス。例えば木全愛子はモノクロに近いフリーハンドのストライプなので、あまり目立たないはずなのに目を惹く。また院の粟田ちひろと水野里奈などはそのままプロとして食って行けそう。逆に武蔵美は今年は作品の質といい会場の雰囲気といい、なぜか団体展みたいに低迷していた。あれ? 日芸はいつのまに通りすぎたんだろう?
2014/02/26(水)(村田真)
島からのまなざし──なぜ今、アーティストは島へ向かうのか
会期:2014/02/19~2014/03/07
東京都美術館ギャラリーB[東京都]
「なぜ今、アーティストは島へ向かうのか」というサブタイトルの企画展。そりゃ瀬戸内国際芸術祭が成功したからでしょ。出品作家は6人だが、とりわけ南国のように濃密な画面を構築する大小島真木(名前からして島!)、どこか知らないが島に移り住んでマルチ画面にパノラマ風景を描く吉田夏奈、そして小豆島のじーさんばーさんをたぶらかして映像を撮った林千歩が濃い。この林の作品には、どこから紛れ込んだのかショッピングバッグレディが一心に見入っていたのが印象的だ。
2014/02/27(木)(村田真)
東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)
会期:2014/02/23~2014/02/27
ロビー階 第3展示室 ロビー階 第4展示室 ギャラリーA[東京都]
「島からのまなざし」の隣でやってたんでついでに見る。が、ここは工芸の展示だけで、絵画は上の会場でやってるらしい。スルーしようかとも思ったが、ふらっと入ってみた。いやー見てよかったー。境界線に位置する人間を小さくフィギュアのように描いた高橋洸平の《越境》も、ゼロ戦、グリコのマーク、食い倒れ人形などで現代日本を表わしたハタユキコの《ワンダフルニッポン》もよかったが、なんつったって久松知子の大作《日本の美術を埋葬する》が逸品。幅5メートル近い横長の画面に、クールベの《オルナンの埋葬》の構図を模して約30人もの画家や批評家を描いた「歴史画」なのだが、登場人物は、中央に岡倉天心、横山大観、平山郁夫、高階秀爾、辻惟雄、北沢憲昭、浅田彰、椹木野衣ら、右手に藤田嗣治、松本竣介、奥村土牛ら、左手に岡﨑乾二郎、村上隆、会田誠、そしてなぜかサーフボードを抱えたクリスチャン・ラッセンまで、ほとんど知った顔ばかり。みんな日本の近代美術を支えてきた人たちだが、しかしずいぶん偏ってる気がするのでよくよく見ると、とくに「日本(日本人)の美術」を追求した人に絞られていることがわかる(ラッセンはおそらく日本人の美術趣味を逆照射したという意味で)。作者の久松(左手前に少女の姿として登場)は日本画専攻で、画材もアクリルと岩絵具を併用しており、内容的にも形式的にもまさに日本画と洋画の混在する「日本の美術」を総括しようとしているのだ。さらに想像を膨らませれば、手前に埋葬用の穴、背景に富士山や雪山が描かれていることから、「総括」の名の下に仲間を殺して埋めた連合赤軍事件や、オウム真理教事件を思い出させないでもない。これは力作。あっぱれ!
2014/02/27(木)(村田真)
佐藤英行 展
会期:2014/02/17~2014/02/27
上野の森美術館ギャラリー[東京都]
2年前の第30回上野の森美術館大賞展で絵画大賞を受賞した佐藤英行の個展。受賞作品の《地鳴り》は津波に襲われる街を描いたもので興味を引いたが、地震・津波関連の絵はこの1点だけで、あとはふだん描いてる半具象の絵ばかり。本人は別に被災地出身でも被災したわけでもないそうだが、「この歴史的な出来事を子孫に絵画として残すこと」が画家としてできることだと思い、制作したという。それはそれでリッパな心がけだが、でもこの1点で大賞をもらい、あとはふだんどおりの制作に戻るというのはどうなんだろう。
2014/02/27(木)(村田真)