2022年10月01日号
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artscapeレビュー

2014年10月01日号のレビュー/プレビュー

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2014

会期:2014/09/13~2014/11/24

六甲ガーデンテラス、自然体感展望台六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、天覧台、六甲有馬ロープウェー(六甲山頂駅)[兵庫県]

六甲山上のさまざまな施設にアート作品を配置し、ピクニック感覚で山上を周遊しながら作品を体験することで、アートと六甲山双方の魅力を再発見できるイベント。今年で5回目を迎えることもあり、もはや円熟味すら感じさせる盤石の仕上がりになっていた。ただし、円熟味=予定調和ではない。たとえば、バス1台をサウンドシステムに変換させた宇治野宗輝、鉄人マラソンを控えてトレーニング兼パフォーマンスを行なった若木くるみ、会期中ずっと被り物スタイルで作品制作を続ける三宅信太郎など、こうした場でなければ出会えないタイプの作品が多数ラインアップされており、現代美術の尖端性もフォローされているのだ。昨今は地域型アートイベントが全国的に乱立し、アートが地域振興のツールに堕しているとの批判もあるが、「六甲ミーツ・アート」は双方のバランスを上手に保っていると思う。昨年は台風の影響でケーブルカーが長期間不通になるアクシデントがあったが、今年は天候に恵まれて滞りない運営が行なわれるよう期待している。また、今年は「ザ・シアター」と題したパフォーマンス系プログラムが多数予定されている。それらの反応も気になるところだ。

2014/09/12(金)(小吹隆文)

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暮沢剛巳『世界のデザイン・ミュージアム』

発行所:大和書房

発行日:2014年05月15日


発行所:大和書房
発行日:2014年05月15日
価格:2,200円(税別)
サイズ:四六判、224頁
著者が赴いた9カ国(イギリス、フランス、スイス、ドイツ、オーストリア、チェコ、デンマーク、フィンランド、アメリカ)25館のデザイン・ミュージアムを紹介する本。題名にある「世界の」というよりは「西欧」のそれを扱ったというほうが正確だろう。南欧からは選ばれずに、ドイツから9館というように選定にやや偏りがあるものの、規模を問わずさまざまなタイプのデザイン・ミュージアムを紹介すべく配慮されている。例えばドイツ語圏を見ると、19世紀英国の産業製品の博物館から発展したサウス・ケンジントン博物館(現在のヴィクトリア&アルバート美術館)を手本とした「オーストリア応用美術博物館」から、企業博物館の「メルセデス=ベンツ・ミュージアム」、ワイマール時代のバウハウスのコレクションを集めた「バウハウス美術館」、磁器の製造過程も見学できる「マイセン磁器博物館」というように、多彩なラインアップとなっている。ミュージアムへの行き方、設立の歴史、展示空間、美術館建築などに触れられているから、これから外国の美術館を訪問する人にはガイドブックとしても役に立ちそうだ。日本にはまだない、国公立のデザイン・ミュージアムに対する今日的な関心から執筆されていることにも注目したい。[竹内有子]

2014/09/12(金)(SYNK)

ディスカバー、ディスカバー・ジャパン「遠く」へ行きたい

会期:2014/09/13~2014/11/09

東京ステーションギャラリー[東京都]

1970年3月から9月まで開催された大阪万博のために、国鉄(当時)は輸送力強化に約40億円の投資を行なっていた。しかし万博が終了すれば、乗客が減少し輸送力が過剰になることが見込まれる。人々に引き続き鉄道で移動してもらうためにはどうしたらよいか。国鉄はその対策を電通に委託した。電通のチームリーダーになったのはプロデューサー・藤岡和賀夫。国鉄側との研究会や電通チーム内部での討議を経て、旅に出て発見するのは自分自身であるという考えからコンセプトは「ディスカバー・マイセルフ」に決まった。ターゲットは若い女性。キャンペーンのタイトルは「ディスカバー・ジャパン」とされ、コンセプトのうちの「マイセルフ」は、「美しい日本と私」という副題で表わされた。国鉄側の承認を得て、万博閉幕の翌月からキャンペーンがスタートした。本展は、一企業のキャンペーンにとどまらず、社会的に大きな反響を呼んだ「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンの諸相と同時代の社会的背景、そしてキャンペーンに対して行なわれた批判を紹介する構成になっている。
 展示第1部は「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」。話題を呼んだキャンペーン・ポスターやさまざまに展開された広報物が集められているほか、藤岡が同時期に制作し、やはり大きな話題を呼んだ富士ゼロックスの広告「モーレツからビューティフルへ」との関連が示される。第2部は「『遠く』へ行きたい」。アンノン族の登場といったD・J(ディスカバリー・ジャパン)キャンペーンと呼応する同時代の若者文化、D・Jキャンペーンの一環として制作されたテレビ番組『遠くへ行きたい』の上映、写真家・中平卓馬によるD・J批判などが取り上げられている。
 これまでD・Jキャンペーンは、鉄道史や広告史、観光史、文化史、社会史など、さまざまな歴史的文脈で論じられてきた。本展の構成も第1部だけを見れば広告史、観光史として成立しているし、第2部を含めれば文化史、社会史の視点による展覧会であるようにも読める。図録に収められた多数の関係者インタビューもまた、貴重な歴史的証言だ。しかし本展を企画をした成相肇・東京ステーションギャラリー学芸員の企図は別のところにあるようだ。図録の冒頭に成相氏は「因果関係のネットワークに事象を落とし込む作業であるような史的記述からなるべく遠くへ行きたい」と書く★1。その「遠く」がどこかといえば、「中平卓馬のディスカバー・ジャパン批判」の批判である。中平はマスコミによる大衆操作を批判し、地方の現実から目を逸らし虚構を見せるものとしてD・Jキャンペーンを攻撃していた。その中平の批判に疑問を呈したのは、テレビ番組『遠くへ行きたい』のプロデューサー・今野勉であった。今野は、中平がエンツェンスベルガーの「旅行の理論」を自身の主張に沿うように恣意的に引用あるいは誤読しているために、そのD・J批判が齟齬をきたしていることを指摘する★2。しかし虚構と現実との境目はどこにあるのか。今野は白樺湖でスモークをたいて偽の霧をつくって撮影を行ない、同時にスモークをたく場面を番組に収めた。長野県南部の下栗村を舞台とした『伊丹十三の天が近い村──伊那谷の冬』に映る猪狩りは剥製を使ったヤラセであり、村の結婚式もまた村人たちが総出で演じたお芝居であることがナレーションとして語られる。しかしそれははたして「嘘」なのか。それとも現実のイメージの「再現」なのか。中平はマスメディアによる操作を批判するあまり、虚構を嘘と断じ、キャンペーンに乗って旅に出る人々をも愚かな存在として攻撃したが、その批判、攻撃は中平自身の主張と矛盾をきたしているのではないだろうか。
 できることなら、展覧会を見る前に図録を通読したい。そうすれば、なぜあの展示室に市販の観光絵葉書が展示されているのか、なぜ中平卓馬と北井一夫の『DISCOVERED JAPAN』が取り上げられているのか、なぜ「遠くへ行きたい」の数多あるエピソードから『天が近い村』が選ばれているのかが理解できるに違いない。そうすれば、タイトルも含めてこの展覧会のすべてが中平卓馬論のための巧妙な伏線であることに気づくに違いない。[新川徳彦]

★1──成相肇「まえがき──ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」本展図録、11頁。
★2──今野勉「ディスカバー・ジャパン論争」(『今野勉のテレビズム宣言』フィルムアート社、1976)128-144頁。


展示風景

2014/09/12(金)(SYNK)

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いくしゅん「愛。ただ愛」

会期:2014/09/14~2014/09/28

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

マンホールの蓋の小さな穴からはい出ようとするネズミ、うんと背伸びしてガラス窓の向こうを覗いているカエル、子どもたちの奇妙なポーズ、普通の人々が醸し出す強烈な違和感……、いくしゅんの写真にはスナップショットの魅力が詰まっている。しかも画面からにじみ出るのは、シリアスな批評的視線というより、愛情のこもった微笑みである。奇跡的な一瞬を切り取った写真を見たとき、われわれは写真家の類まれなるセンスに驚愕する。しかし、いくしゅんの場合は、むしろ奇跡の方から彼に近づいてきたかのようだ。また、連続する複数のショットを3コマ、4コマと並べてショートストーリーをつくり上げる作品が幾つかあり、その手法にも彼ならではのものがあった。

2014/09/15(月)(小吹隆文)

橋本満智子 展「孕む青」

会期:2014/09/12~2014/09/20

艸居[京都府]

白い素地と青のコントラストが印象的な陶芸作品。花をモチーフにしたオブジェと、花入などの器を出品していた。前者は蕾から開花までの花の状態を手びねりで表現しており、大胆さ、豪快さ、力強さを感じる造形と、胴体の窪んだ部分に見られる青の釉薬が鮮烈であった。一方器は、粘土の小さな塊を積み上げて成形しており、表面には石垣のような模様が残っている。その模様部分に青の釉薬が広がっているのだが、オブジェとは対照的にきわめて繊細な表情を見せており、筆者自身はオブジェ以上に魅力を感じた。

2014/09/16(火)(小吹隆文)

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