2021年03月01日号
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artscapeレビュー

2015年12月15日号のレビュー/プレビュー

アルファヴィル《カトリック鈴鹿教会》

[三重県]

竣工:2015年

続いて、アルファヴィルが設計したカトリック鈴鹿教会へ。ロードサイドの敷地ゆえに、地上は駐車場とし、その上にピロティ形式で教会を載せる。分節された三角屋根が、甲殻類のように連続するシルエットが忘れがたい。屋根の段差に設けられたさまざまなハイサイドライトから光を導き、その下にシンボリックな空間から機能的な部屋まで、さまざまな場を配する。現在、鈴鹿では、信徒が多国籍化しているという。

2015/11/02(月)(五十嵐太郎)

成田克彦──1973-1992 実験の続き

会期:2015/10/26~2015/11/20

東京造形大学附属美術館[東京都]

成田克彦(1944-1992)を知ってる人はどれだけいるだろう。名前と、「もの派」の作家、「炭」の作品くらいは知ってても、それ以降の活動を知ってる人はごくわずかしかいないのではないか。ここには代表作《SUMI》も出ているが、たった1点、しかもプロトタイプというべき小さなキューブのみ。残りの約30点はそれ以降の作品だから、同展の狙いは「炭の成田」像をいちど解体し、その後の作品展開から彼のやろうとしたことを浮かび上がらせることだといえる。70年代には関根伸夫や菅木志雄もやった位相幾何学的なレリーフ状の作品を制作。80年代に入ると帆布を丸めたり、板を棚状につけて彩色したり、丸太に帆布を巻いたり、木の幹をコラージュしたタブローに赤い帯を巻いたり、実にさまざまな、そして奇妙な形態の作品を発表するが、もっと奇妙なのは、すべての作品にウサギの毛がとりつけられていることだ。これらの作品がいったいなんなのか、どういうつながりがあるのかよくわからないけれど、この数センチの黒い毛に関してはたぶんだれもが陰毛を想起するに違いない。成田さんはいったいなにを考えていたのか。ひょっとしたら、従来の作品解釈のような作品相互のつながりや美術史への参照を通して理解するのではない、もっとまったく別の価値基準でなにかをつくろうとしていたのではないか、と思ったりもする。でもその一方で、単に失敗作を連発していたのではとの疑念もぬぐえないが。いずれにせよ志なかばで亡くなったことは間違いない。

2015/11/02(月)(村田真)

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西村陽一郎「見る影がある」

会期:2015/11/03~2015/11/15

Gallery Photo/synthesis / Roonee 247photography[東京都]

西村陽一郎は1967年、東京生まれ。美学校で写真を学んだ後、1990年代から数々の作品を発表してきた。1995年、東京・銀座の画廊春秋での初個展以来25年になるというから、キャリア的には相当の厚みを加えてきたといえるだろう。ただ、フォトグラム作品を中心とする作家活動は、多産な割にはうまく焦点が結べないところがあった。だが、今回東京・四谷のGallery Photo/synthesis と Roonee 247photographyで同時開催された展示を見て、彼の本領がようやく発揮されてきているように感じた。
Gallery Photo/synthesisの展示は2部構成で11月3日~8日が「Y氏の光学装置」、11月10日~15日が「青いイカロス」である。両方ともフォトグラム作品だが、特に故柳沢信の所蔵物だったというハッセルブラッドのカメラ、レンズ、4×5インチ判のカメラのレンズボードなどをモチーフにした「Y氏の光学装置」が面白い(「青いイカロス」は鳥の羽根を使ったカラー・フォトグラム作品)。シンプルに抽象化されたカメラやレンズのフォルムが、細部まで注意深く構成されていて、写真表現の旨味を追求し続けた柳沢に対する見事なオマージュになっている。
Roonee 247photographyでは「啞子」、「ヌード」、「脚」の3作品。こちらはフォトグラムではなく、ブルー系にプリントされた「普通の」写真作品だが、これまでの西村の作品にはあまり感じられなかったフェティシズム、エロティシズムの要素が、かなり強く打ちだされていることに嬉しい驚きを覚えた。別に隠していたわけではないだろうが、一人の写真家の中に潜んでいた多面的な貌つきが、このような形で顕われてくるのはとてもいいことだと思う。この展示を踏み台にして、さらにスケールアップした作品を発表していってほしいものだ。

2015/11/03(火)(飯沢耕太郎)

有元伸也「ariphoto2015 vol.2」

会期:2015/10/27~2015/11/08

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

有元伸也が主宰する東京・四谷のTOTEM POLE PHOTO GALLERYが、開廊10年目を迎えた。写真家たちが自主的に運営するギャラリーを続けるには、経済的な問題だけでなく、モチベーションを維持すること自体が大変だと思う。しかもTOTEM POLE PHOTO GALLERYは、ここ10年レベルを落とすことなく展示活動を続けているわけで、それだけでも特筆すべきことではないだろうか。
その有元が、同ギャラリーで年2~4回のペースで発表し続けている「ariphoto」のシリーズも息の長い仕事だ、年1冊ずつ、作品をまとめて刊行している写真集の『ariphoto』も、今回で6冊目になった。新宿を主な舞台とする6×6判、モノクロームのスナップ写真という基本的な枠組みは変わらないものの、初期の写真とくらべると、微妙に変化してきているのがわかる。わかりやすいのは、2011年からレンズを38ミリ(35ミリのカメラに換算すれば21ミリ)の広角レンズに変えたことだろう。スクエアな画面の正面に、被写体を大きく据えて撮影していた以前の作品よりも、周辺や奥の写り込みのスペースが大きくなり、背景にダイナミックな動きが取り入れられるようになった。とはいえ、被写体となる異形の人物やモノを、獲物に飛びかかるように捕獲していく強度はそのまま維持されている。有元は東京ビジュアルアーツの講師をしていて、時々、彼の教え子で同じような6×6判のスナップを試みる者がいるのだが、まったく似ても似つかぬ弱々しいものになってしまう。街歩きの緊張感を保ち続けることのむずかしさがよくわかる。まさに「ariphoto」としかいいようのない、誰もが追随できない領域に達しつつあるのではないだろうか。

2015/11/03(火)(飯沢耕太郎)

METライブビューイング:ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』

会期:2015/10/31~2015/11/06

METライブビューイングのプログラムで、ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』を映画館で見る。火あぶりにされたジプシーの老女の呪い/復讐ゆえか、女性をめぐって引き起される兄弟殺しの悲劇である。闘病を感じさせないホヴォロストフスキーと、貫禄がついたネトレプコ、主役をつとめる二人の歌手が舞台を引き立てる。切り替わる回転舞台と、階段を伴う高さを生かした空間の演出である。

2015/11/03(火)(五十嵐太郎)

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