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2015年12月15日号のレビュー/プレビュー

アジアの日常から:変容する世界での可能性を求めて

会期:2015/10/17~2015/12/12

TOTOギャラリー・間[東京都]

気がつくと、もう建築専門ギャラリーの30周年記念であり、今回はアジアをテーマとしている。ただ、3階の展示は作品は面白いが、ちょっとわかりにくい構成と見せ方だった。一方、庭に設置されたヴォ・チョン・ギアによる竹の構築は、1/1の空間を出現させている。そして4階の大西麻貴+百田有希の巨大模型による経験の空間のスタディ、チャトポン・チュエンルディーモルの模型群を収納するデザイン屋台は、明快にメッセージを伝えており、気持ちいい。
写真:左上=チャオ・ヤン、左下=ヴォ・チョン・ギア、右上=大西麻貴+百田有希、右下=チャトポン・チュエンルディーモル

2015/11/04(水)(五十嵐太郎)

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GOOD DESIGN EXHIBITION 2015[2015年度グッドデザイン賞受賞展]

会期:2015/10/30~2015/11/04

東京ミッドタウン[東京都]

審査員の立場から、グッドデザイン賞の展示と大賞選出の投票会場に足を運ぶ。ここの展示も、東京ミッドタウンの複数の場所に散らばり、全体像がわかりにくい。今年のファイナルとなる大賞候補の8点には、義手、車いす、道の駅が2つ入っており、時代性を感じさせる。建築ユニットからは、三浦丈典のFARMUS木島平が残ったが、大賞には選ばれなかった。ジャンル以外からの票も必要であり、改めてグッドデザインの大賞をとることの難しさを痛感する。なお、今年のグッドデザイン賞で、筆者はフォーカス・イシューのディレクターを務め、「防災・減災・震災復興」を担当し、「災害を通じて真価が試されるデザイン」のテキストを執筆した。

2015/11/04(水)(五十嵐太郎)

公共建築から考えるアーバンデザインの実験「大宮東口プロジェクト2015」

会期:2015/10/30~2015/11/06

渋谷ヒカリエ8/COURT[東京都]

東洋大学「大宮東口プロジェクト2015」@ヒカリエ。異なる設定の容積率、学校のあり/なしの変化要素を絡ませて、藤村龍至のおなじみの手法により、複数のチームの学生がスタディのプログラムを走らせる。展示では、やはり一連の過程の模型を時系列に置く。おそらく、これ自体が設計手法と展示の見せ方の発明であり、今後、幾らでもバリエーションを増やせるだろう。

2015/11/04(水)(五十嵐太郎)

村上隆の五百羅漢図展

会期:2015/10/31~2016/03/06

森美術館[東京都]

これはスゴイ。もはやあきれるばかり。2012年にカタールで公開した全長100メートルの《五百羅漢図》をはじめとする超巨大な新作群。ここでは絵画も彫刻も4メートル、5メートルが標準サイズだ。その物量もさることながら、ピカピカの完成度にも舌を巻く。一見奔放なタッチに見えようとも、激しい絵具の滴りに見えようとも、表面はすべすべで本当にスーパーフラット。これはもはや絵画というより工芸品、というより工業製品の域に達している。ここまで来るともうだれにも真似できない、というかだれも真似しようとも思わないでしょうね。その《五百羅漢図》だが、基本は青龍、白虎、朱雀、玄武の4パートに分かれ、各25メートルの大画面に極彩色の聖人や怪物どもが跋扈している。これを制作するために全国の美大から集められたアシスタントは200人を超すという。ここまでケタはずれの巨大プロジェクトになるとマネジメントがきわめて重要になってくるが、別室の陳列ケースにはちゃんと日時やアシスタント名が記された進行表なども公開されていて役に立つ。「指示書どうりにヤレ! ボケ!」「ひでーなー」「低レベル……」などと書きなぐられた見本もあって、とても絵を描く環境とは思えない制作現場の空気を伝えてくれる。アートの現場はこうでなくちゃいけない、とは思わないが、ここまで緊張感を持って制作にのぞんでいるアーティストが果たしてどれだけいるだろうか、とは思う。学ぶべきことの多い展覧会である。

2015/11/04(水)(村田真)

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牧口英樹/エレナ・トゥタッチコワ「はじまりのしじま」

会期:2015/10/10~2015/11/14

Takuro Someya Contemporary Art[東京都]

東京・南麻布に新しくオープンしたギャラリーで、日本人とロシア人の写真家というやや異色の組み合わせによる二人展が開催された。牧口英樹は1985年、札幌生まれ。エレナ・トゥタッチコワは1984年、モスクワ生まれ。年齢が近いこと以外に、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程に在学していた(エレナは現在博士課程に在学中)という共通点がある。どちらの作品も、中判カメラで細やかに描写された風景ということに違いはないが、被写体のあり方はかなりかけ離れている。彼らが執筆した、とてもよく練り上げられたコメントによれば、牧口は「都市や環境における人の不在を通じたその『存在』を強く感じ」を、エレナは「自然の中にある人々が、その『存在』を普遍にして」いるというのだ。
ここで彼らが「存在」という言葉で言いあらわそうとしているものこそ、本展の主題である「静寂」(しじま)である。いうまでもなく、写真からは音は聞こえてこない。写真にとって「静寂」は本質的な属性である。だが、だからこそ、逆に「静寂」という状態が「聞こえる」(感じとられる)ものとして立ち上がってくる。牧口とエレナは、それぞれ「都市や環境」、「自然の中にある人々」(モスクワ郊外の夏の情景)を撮影することで、「静寂」に耳を傾け、その「はじまり」を見つめ直そうとしている。そのことが、緊張感を保ちながら、どことなく懐かしさに胸を突かれるような場面として定着されていた。二人とも、写真家としての自分の作品世界が明確に形をとりつつある、とても大事な時期にさしかかっているように感じる。次の展示が楽しみだ。

2015/11/06(金)(飯沢耕太郎)

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