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2009年06月15日号のレビュー/プレビュー

廣江友和「Uneasy place」

会期:2009/05/15~2009/06/13

メグミオギタギャラリー[東京都]

ぬいぐるみやフィギュアの写真をコラージュしているのかと思ったら、すべて手描き。白い地塗りにヤスリをかけ、その上からていねいに描いている。このギャラリーはいつも珠玉のような作品をつくるアーティストを発掘してくるから目が離せない。

2009/05/30(土)(村田真)

戸泉恵徳 展

会期:2009/05/18~2009/05/30

銀座芸術研究所[東京都]

田んぼに巨大な軍艦が入港し、ミサイルを発射している図。かたわらにはマックの包装紙が。これを小松崎茂ばりのリアリズムで描くからたまらない。作者がバイトで看板描きをやってると聞いて納得。

2009/05/30(土)(村田真)

矢萩喜從郎 展「Magnetic Vision/新作100点」

会期:2009/05/08~2009/05/30

ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]

1階と地下1階の2フロアに計100枚の作品が並ぶ。それらは日常的な風景写真だったり、雑誌などから引用したイメージだったりするが、中央に円形の窓がうがたれ、そのなかに四角い画面より広範なイメージが凝縮されている。つまり、虫メガネとは逆に小さく見えるレンズでのぞいた感じだ。部分に全体が宿るというホリスティックな理論を思い出すが、それより矩形の画面と円のプロポーションが日の丸に似ているのが気になる。

2009/05/30(土)(村田真)

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内野清香「6つの部屋」

会期:2009/05/09~2009/05/30

art & river bank[東京都]

1980年生まれ、2006年に東京綜合写真専門学校夜間部を卒業した内野清香の初個展。「他人の夢」を写真で辿り直し、再構築すると言う試みである。たとえばこんな夢。

──幼馴染みの友達に小学校で公開デッサンがあると連絡があって見に行く。会場に到着するとすでにデッサンが始まっていて、部屋は薄暗い。客は俺一人。モデルは机と椅子を重ねた上に座っている。画家がモデルの周りで考え事をしたかと思うと、ナイフを取り出した。いきなり「根拠を証明する」とか言って、モデルの左目からこめかみにかけてナイフで斬りつけた。モデルは前を向いたままじっとしている。モデルの周りを一周したところに、誰かが入ってきて「そいつの名前はピンクフロイドっていうんだよ」と言った。

こんな感じの6つの夢が、2~6枚程度の写真で再演されるとともに、テキストを読む声がCDから流れるようにセットされている。「他人の夢」を共有し、「誰のものともわからぬ物語」を生み出していくというアイディアは悪くない。もちろん、その再構築のプロセスがあまりうまくいっていないものもあるが、もう少し数を増やして(同時にレベルに達していないものを淘汰して)いけば、見応え、聴き応えのあるシリーズに成長していきそうだ。

2009/05/30(土)(飯沢耕太郎)

森口将之『パリ流 環境社会への挑戦──モビリティ・ライフスタイル・まちづくり』

発行所:鹿島出版会

発行日:2009年5月30日

現在、モビリティという側面から急変貌しているパリを、自動車ジャーナリストである森口将之氏が描いた。パリは2007年にヴェリブと呼ばれるレンタサイクルを導入し、これまで市内でほとんど見なかった自転車が一気に普及した。すでに2万台の自転車と1,000カ所近くのステーションが設置されているという。2007年にはもう一つ大きな変化が起こっており、本格的なカーシェアリング・システムが動き出した。カーシェアリングは、タクシー(短距離)とレンタカー(長距離)の間を埋めるもの(中距離)として位置づけられることによって、その登場に必然性も与えられた。さらにトラムの復活やセーヌ川ビーチなどの試みもあわせ、近年のパリの環境都市への変貌を追跡する。フランスはこれまで環境に対して必ずしも積極的な動きを見せる国ではなかった。1992年のリオデジャネイロにおけるアジェンダ21宣言に対しても反応は鈍かった。しかしパリでは、ベルトラン・ドラノエが2001年に市長に就任してからさまざまな変化が起こっている。本書はその成果をモビリティとエコを中心とした視点からまとめたものともいえるが、パリ以外の地方都市などフランス全体の動きにも触れられており、示唆が多い。
ヨーロッパの都市に住むと、なんと変化の遅いことだろうと、多くの日本人は感じるかもしれない。スクラップ・アンド・ビルドの激しい日本の都市は、表面的にはめまぐるしく変化しているように見えるけれども、一方で都市全体の構造的な変化は起こりにくい。しかし、ヨーロッパの都市では時にこういう大胆な変化が起こる。ストラスブールにトラムが導入されたときも、たった15年程度で都市全体が生まれ変わったという。もちろん、石造りの旧市街地を持つヨーロッパと、日本の都市を簡単に比較することはできない。しかし、ここで触れられた変化は交通機関に関するものであり、日本の都市が参考にできる点は多いのではないだろうか。

2009/05/30(土)(松田達)

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