artscapeレビュー

2009年09月15日号のレビュー/プレビュー

星裕之『建築学生の「就活」完全マニュアル』

発行所:エクスナレッジ

発行日:2009年8月21日

星裕之『建築学生の「就活」完全マニュアル』エクスナレッジ
筆者の編著による『建築学生のハローワーク』が業種の広がりと読み物的な要素をめざしていたとすれば、こちらはタイトル通り、面接のポイント、エントリーシートやポートフォリオなどの書き方もとりあげ、具体的な就職活動の「マニュアル」に徹底し、建築系の業種における必勝法を説く。参考書のような体裁、鈴木茜のイラストなどもユニーク。

2009/08/31(月)(五十嵐太郎)

Christian Holstad『Fellow Travelers』/Buku Akiyama『Composition No.2 "an exceptional state": with equipments owned by hiromiyoshii』/Eiki Mori+Komichi Kobayashi『Crows and Pearls』

発行所:edition nord

発行日:2009年

これらはデザイン事務所のschtüccoが、edition nordという出版レーベルを立ちあげて、手がけた本である。一冊目は、Hiromi yoshiiのクリスチャン・ホルスタッドが用いた素人写真を再現し、箱詰めにしたもの。本というよりは、限定の美術作品である。二冊目は、秋山ブクのインスタレーションを山本真人が写真におさめたドキュメント。いったん製本されたものを手作業によって表紙を剥がしているから、厳密に言うと、まったく同じ本は存在しない。三冊目は写真家の森栄喜と小説家の小林小路のコラボレーション。カードの集積になっており、作家らが包装を行なう。本ではあるが、大量生産の印刷物ではない。アーツ・アンド・クラフト的というか、手の痕跡を強く残した贅沢な書物たちである。部数が多くないからこそ、製作が可能になっており、限定版を所有する愉しみが感じられる。

2009/08/31(月)(五十嵐太郎)

隈 研吾展 Studies in Organic

会期:2009/10/15~2009/12/19

ギャラリー・間[東京都]

隈研吾の本格的な展覧会が久々に日本で開かれる。国内では、2004年に松屋銀座で「隈研吾・負ける建築」展が行なわれ、また2005年にGAギャラリーで「隈研吾展──モックアップス」が開かれたが、それから約5年。海外のコンペでも複数勝利し、いまや国内外でプロジェクトを抱え、疾走し続ける隈の、最新の状況を見ることができる展覧会となるだろう。今回のテーマは「有機的」ということらしい。「負ける建築」から「有機的な建築」へ。また隈が新しいキーワードを打ち出した。おそらく、そこには深い戦略と建築への思考が潜んでいるに違いない。考えてみると、これまでも隈は数々のキーワードで自作を説明してきた。「消える建築」「粒子化する建築」「負ける建築」「自然な建築」、そして今回の「有機的な建築」である。会場には、海外のビッグプロジェクト「ブザンソン芸術文化センター」「グラナダ・パフォーミング・アーツ・センター」の、なんと1/25という巨大模型が現われるというので、展示そのものも注目される。考えてみれば、ギャラリー・間では、1995年に「隈研吾展──建築 転送の速度」が開かれており、それから実に14年ぶりの展覧会である。建築的な展開だけでなく、つねに理論的な前進を遂げる、隈のこれまでの軌跡とこれからの方向性を確認できる展覧会として、ぜひ注目したい。

2009/08/31(月)(松田達)

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「Detour」(デトゥア)

会期:2009/10/16~2009/11/04

MoMA Design Store[東京都]

世界的に活躍するさまざまな分野の作家が使用したモレスキンのノートブックを展示する展覧会。東京展にあわせ、建築では、青木淳、伊東豊雄、隈研吾、妹島和世、西沢立衛、森俊子らが、他の分野では、深澤直人、押井守、ホンマタカシ、原研哉ら多数が参加するという。少なくとも建築においては、制作の過程を、ましてや建築家の手帳の中身を見ることのできる機会はなかなかないので、貴重な展覧会ではないだろうか。

2009/08/31(月)(松田達)

企画展 建築のちから02「20XXの建築原理へ」

会期:2009/09/24~2009/10/10

INAX:GINZA 7Fクリエイティブスペース[東京都]

まさに建築最前線ではないか。伊東豊雄が選んだ建築家と構造家(藤本壮介、平田晃久、佐藤淳)が、東京都心部で架空の再開発プロジェクトを行なうという。おそらく、相当の自由度を与えられたときに、建築はいかに進化するのかということをシミュレートした、非常に実験的なプロジェクトだといえよう。内容は現段階でかなり謎めいており、まだ4枚の画像しか公開されていないようである。多くの展覧会は、最初にある程度誰がどのプロジェクトを展示するのか分かっていたり、またあらかじめプロジェクトの内容も知られていたりする場合が多いが、この展覧会ほど事前の情報が明らかにされていないものも珍しいかもしれない。同名の書籍『20XXの建築原理へ』も「建築のちから」シリーズとして発売予定であるという。編集は、若手建築ユニットのmosaki(大西正紀+田中元子)。

2009/08/31(月)(松田達)

2009年09月15日号の
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