2017年05月15日号
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artscapeレビュー

燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡

2016年10月15日号

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会期:2016/07/16~2016/09/11

府中市美術館[東京都]

府中来訪の目的はこれ。1904年生まれの新海覚雄は、30年代の不況時から労働者を描き、戦後は日本美術会の創設に参加、砂川闘争をはじめとする平和運動や労働争議をモチーフに「ルポルタージュ絵画」を制作した画家。その後もメーデーのポスターや原水禁の版画を手がけるなど、バリバリの社会派でならした。ただし戦時中、いわゆる作戦記録画は描かなかったけれど、広い意味での戦争画は手がけた。銀行にお金を預ける人々を描いた《貯蓄報国》がそれだが、戦闘図ではなく銃後の生活を描いた穏やかなもの(本展には出ていない)。とはいえ貯蓄を奨励し、軍事費増強のプロパガンダを担った面は否めない。だから悪いというのではなく、もしこれも戦争画と呼ぶなら、社会派絵画とは紙一重かもしれないということだ。例えば1955年の国労の闘争を描いた《構内デモ》は、《貯蓄報国》などよりはるかに戦争画っぽい。いろいろ考えさせられる展覧会だ。しかし同展は「府中市平和都市宣言30周年記念事業」の位置づけで、出品作品約70点と半端でなく、しかもその大半を他館から借りているのに、なぜか常設展示室で行なわれている。また開催前には上から中止を含む再検討を指示されたという。どういうこと? それこそ戦争画の時代が近づいているんじゃないか?

2016/09/02(金)(村田真)

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