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artscapeレビュー

原游「山水 SAN-SUI」

2016年10月15日号

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会期:2016/09/16~2016/09/28

市原湖畔美術館[千葉県]

美術館の展示室ではなく、多目的ホールと情報ラウンジを使った個展。壁の仕様も広さも展示室にはかなわないが、空きスペースを若手作家の発表の場に提供する試みは評価したい。ただし見に行くのが大変だけどね。原は新作を中心に30点以上出している。いくつかに分類すると、まず、チラシやネットなどから拾い集めた図像をキャンバス上に再構成し、油彩で描いたシリーズ。このとき再構成したものがひとつの人物像に見えるなど、部分の集合が別の全体像を生み出している。《Rolling Moon》や《SAN-SUI》などだ。次に、紙の表裏に別の絵を描いてあれこれ折り曲げ、表裏の画像を同時に見せる「谷折ドローイング」シリーズ。これはトポロジカルな発想で、ある種のワープ感や予期せぬ偶然の出会いを感じることができる。もうひとつ、キャンバスの一辺だけ布を長くしてうしろに折り曲げ、犬の耳のように垂らしたり、布をほどいて髪の毛状にしたりするシリーズ。《泉(ネコ)》と《泉(女の子)》、一連の《にこにこ飛行》などがそれだ。これは彼女が絵画というものを単なる平面としてではなく、ひとつの物体として捉えている証だろう。部分と全体、裏と表、平面と物体──いずれも絵画の根本原理を問い直す作業といえる。もっと重要なことは、それを眉間にシワを寄せてシリアスに取り組むのではなく、ポップに楽しくやってることだ。なぜそれが重要かといえば、そのほうが見ていて楽しいからに決まっている。

2016/09/27(火)(村田真)

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