artscapeレビュー

杉本博司 ロスト・ヒューマン

2016年10月15日号

会期:2016/09/03~2016/11/13

東京都写真美術館[東京都]

写真美術館のリニューアルオープンは2フロアを使った杉本博司の個展だが、これはおったまげた。展覧会は3階の「今日 世界は死んだ もしかすると明日かもしれない」と、2階の「廃墟劇場」および「仏の海」の3部構成だが、3階は写真がほとんどない。いやたくさんあるのだが、それ以上に杉本が集めたおびただしい量の化石、古書、土器、看板、ポスター、隕石、能面、能装束、バービー人形、解剖図、卒塔婆、ラブドールなどのコレクションであふれ、そういえば杉本の写真もあったなあってなもんだ。展示は「理想主義者」「古生物研究者」「ラブドール・アンジェ」「安楽死協会会長」「宇宙飛行士」「コメディアン」など33のカテゴリーに分かれ、それぞれさびたトタン板で仕切られたブースごとにガラクタと写真が並び、「今日、世界は死んだ」で始まる肉筆の文章がそえられている。これを代筆したのは浅田彰、福岡伸一、朽木ゆり子、ロバート・キャンベル、極楽とんぼの加藤浩次ら。どういう人選だ? ともあれ一つひとつ物語仕立てになっているのだ。例えば「ラブドール・アンジェ」は寝椅子にラブドールが横たわり、脇にランプ、背後に杉本の「ジオラマ」シリーズの《オリンピック雨林》が置かれている。手前に《マン・レイによるマルセル・デュシャンのポートレイト》があることから、これがデュシャンの遺作を再解釈したものであることがわかる。ここでは「ジオラマ」は本来の文脈をはぎ取られ、単なる背景画もしくはイラストとしてラブドールに奉仕させられているのだ。ちなみに文章を代筆したのは束芋。いやー楽しかった。2階の「廃墟劇場」もぶっとんでる。映画館のスクリーンに映し出された1本の映画の光で撮影した「劇場」シリーズのいわば未来編で、廃墟となった劇場内部が写し出されているのだ。1枚で「劇場写真」と「廃墟写真」のふたつが味わえるってわけ。もうサービス満点の展覧会。

2016/09/17(土)(村田真)

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