2022年10月01日号
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artscapeレビュー

たかはしようこ「イノセント」

2011年08月15日号

会期:2011/06/30~2011/07/05

現代HEIGHTS Gallery DEN[東京都]

東京綜合写真専門学校の校長をつとめる谷口雅から、世田谷区北沢の現代HEIGHTSで、連続展をやるという通知がきた。「春、桜を撮っていた」(6月30日~7月5日)を皮切りに、「街の闇の心地良さに」「移動あるいは想起する日常性」「水面を眺めてばかりいる」と7月26日まで4部構成で「春から夏へ、切断し旋回する四つの写真の試み」が展開される。その最初の展示を見に行ったら、奥のGallery DENでは、東京綜合写真専門学校を3年前に卒業した、たかはしようこの「イノセント」展が開催されていた。どうやら谷口のもくろみというのは、自分の展示を露払い役にして、4人の若手女性写真家たち(ほかにシンカイイズミ、森花野子、大沼洋美)の個展を同時期に開催し、そちらに観客を集客しようということだったようだ。
まんまとその企みに乗せられてしまったのだが、たかはしの作品はなかなか面白かった。淡い色彩や弾むようなカメラワークは、この世代の女性写真家たちのトレードマークのようなものだが、それに加えて森の中の粘菌(変性菌)のように分裂し、増殖していくドット状の形象に対するこだわりに、彼女の独特の視点がある。以前は自分で手を加えたオブジェを撮影する作品が中心だったのだが、近作にはスナップやポートレートも加わってきている。ただ、そろそろセンスのいい「イノセント」な世界を構築することだけでは、物足りなくなる時期にさしかかっているのではないかと思う。哲学や思想というのはやや大げさかもしれないが、自分の世界観をもっときちんと集中して打ち出していくべきだろう。一皮むければ、いい作家になっていくのではないかという予感がする。
谷口雅の作品は、タイトルのつけ方ひとつ見ても、彼の世界観にしっかりと裏打ちされている。たかはしにとっては、身近にいい手本があるということだ。

2011/07/03(日)(飯沢耕太郎)

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