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アルプスの画家 セガンティーニ──光と山

2011年08月15日号

会期:2011/07/16~2011/08/21

佐川美術館[滋賀県]

生涯、アルプスの山々の風景を描きつづけた画家、ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858~1899)を初期から晩年までの作品約60点によって紹介する展覧会。眩しい光を遮るようなポーズで、帽子に手を当てている女性が描かれた《アルプスの真昼》は展覧会のチラシやカタログの表紙も飾っている印象的な作品だが、ここでつかわれている分割技法は、スーラやシニャックの点描によるそのイメージとは異なり、細かい線による色の層で成立している。澄んだ空気や美しい光をとらえようとしたセガンティーニ独特のこの手法は、同じ時期のフランスの新印象主義とは関係なく試みられたと考えられるとのことで興味深い。雄大なアルプスや、痩せた土地で生きる人々の姿、素朴な農民の生活などが描かれた作品のなかには、若い動物の死を描いたものも数点展示されている。セガンティーニは生、死、母性といったテーマにも多く取り組んでいるのだが今展では、7歳で母をなくしその後孤児となってしまったというその生い立ちや人生と作品主題との連関にもふれられている。展示を注意深く見ていくと作家そのものへの興味が掻き立てられていく展示構成。できるだけゆっくりと堪能したい展覧会だ。

2011/07/15(金)(酒井千穂)

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