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森村泰昌 新作展「絵写真+The KIMONO」

2011年08月15日号

会期:2011/07/06~2011/07/25

日本橋タカシマヤ6階 美術画廊X[東京都]

最近はマッチョ系の男子への変身が多かった森村泰昌の新作は、ひさびさに女性をモデルとするセルフポートレート作品だった。元になる原画は金沢出身で大阪を中心に活動した日本画家、北野恒富の「《キモノの大阪》春季展覧会」(高島屋大阪長堀店、1929)のポスターである。束髪の若い女性が着物を肌脱ぎにして肩と片方の乳房を見せている、なんとも大胆な図柄であり、駅などに貼り出されたものはその日のうちに全部なくなってしまったという。大阪生まれで、いまも活動の拠点を大阪に置いている森村にとって、この北野のポスターの「でろり」とした濃密なエロティシズムには、かなりの親近感があったのではないだろうか。その「日本画なのに写真みたいな描き方」も彼の「絵写真」の手法にぴったりしていると思う。
今回の出品作は6点で、「恒富風桃山調アールデコ柄」「上品會/豊公錦綾文」「百選会/ロマン・ド・ラ・ローゼ」「百選会/小磯良平風に」「アレ夕立に/栖鳳風に」「森村作/構成主義風に」と、着物の柄をたっぷりと見せる構図になっている。北野恒富の原画に加えて、「上品會」や「百選会」のような高島屋主催の着物発表会の出品作、高島屋所蔵の小磯良平や竹内栖鳳の名作、森村自身の抽象的なシルクスクリーン作品がデザインされた着物それ自体が、画面の中でそれぞれしっかりと自己主張している。「高島屋創業一八〇周年記念」の展覧会にふさわしいものであり、ここまで「衣裳を見せる」ことにこだわったシリーズは、森村のこれまでの作品にもなかったのではないだろうか。
なお、本展は高島屋新宿店十階美術画廊(8月10日~22日)、同大阪店六階ギャラリーNEXT(12月28日~2012年1月10日)に巡回する。

2011/07/13(水)(飯沢耕太郎)

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