2022年07月01日号
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artscapeレビュー

吉行耕平「The Park」

2011年08月15日号

会期:2011/06/29~2011/07/18

BLD GALLERY[東京都]

吉行耕平の「公園」のシリーズを最初に見たのはいつだっただろうか。1970年代前半に『週刊新潮』に掲載されてかなり話題になったのを覚えているし、1980年に刊行された写真集『ドキュメント 公園』(せぶん社)も購入しているので、探せば家のどこかにあるはずだ。初めから、これはかなり面白いシリーズだと思っていたし、その印象はいつ見ても変わらない。奇妙にしぶとい魅力を発し続ける作品といえるだろう。
赤外線フィルムを入れたカメラで闇の中を透視するという手法は、吉行の専売特許というわけではないのだが、このシリーズはそれ抜きでは考えられない。公園の夜陰にまぎれて密かな行為をおこなおうとするカップルを、ハンターのように狙ってシャッターを切っている。そこに写ってくるのが、当事者のカップルだけではないのがポイントだろう。そこには、カップルの近くに群がっている「覗き」のグループの姿もくっきりと浮かび上がってくるのだ。しかも、ただ覗いているだけではなく、時には行為に没入している女性の体に触ろうとする者までいる様子が実におかしい。人間という生きものの本性というべき、滑稽で切実なふるまいを、見事にとらえきったドキュメントといえるだろう。
「覗きたい」という欲望は、考えてみれば写真を撮影するという行為の原動力でもある。純粋な好奇心に突き動かされて撮影し続けた結果として、「公園」シリーズは単なるスキャンダルを突き抜けた表現性を獲得することができた。2000年代に入ってから、吉行の作品が欧米のコレクターたちの間で大きな話題を集め、ニューヨークをはじめとして個展や写真集の刊行が相次いでいるのも当然というべきではないだろうか。

2011/07/12(火)(飯沢耕太郎)

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