2022年05月15日号
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artscapeレビュー

没後100年 青木繁 展──よみがえる神話と芸術

2011年08月15日号

会期:2011/07/17~2011/09/04

ブリヂストン美術館[東京都]

前回青木の回顧展が開かれたのは生誕90年の1972年のことだから、およそ40年ぶりの回顧展。高校生だった私もしっかり見に行き、目に焼きつけましたね。《海の幸》をはじめとする主要作品はその後ほとんど見る機会もなかったので、今回イッキに40年をワープした感じ。とはいえ見覚えのない作品や資料もたくさんあって、よく集めたもんだと感心する。とくに目が止まったのが何点かの肖像画。これらは以前にも見たことあるかもしれないが、記憶にとどめる必要なしと削除されてしまったのかもしれない。ま、それほどつまらないというか、青木らしくない作品なのだ。とにかくヘタ。顔のデッサンも立体感も陰影も画学生レベルだし、なにより表情がなく、モデルの人格にまで踏み込もうとしていない。おそらく青木にとっては生活費を稼ぐためにしぶしぶ引き受けた注文制作だろうけど、いくら不本意な制作でも天才であればおのずと才能がにじみ出るはずだし、自負心の強い青木なら皮肉のひとつでも描き込んでもいいようなものだが、それもない。まったくのやっつけ仕事、なのにサインだけはきっちり入れてある。これはどう考えればいいのだろう。こうした肖像群を除いて回顧展を構成することも可能だったはずだが、今回はそんなわかりやすい「夭折の天才画家」像ではなく、青木の負の面、謎の面も出して全体像に迫ろうとしている。

2011/07/19(火)(村田真)

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