2021年09月15日号
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artscapeレビュー

原芳市「光あるうちに」

2014年11月15日号

会期:2014/09/27~2014/11/03

POETIC SPACE[東京都]

原芳市の『光あるうちに』は2011年に蒼穹舎から刊行された写真集。写真集と同時期に東京・新宿のサードディストリクトギャラリーで開催された個展を見て、この写真家の作品世界が新たな高みに達したと感じたことをよく覚えている。1970年代以降の「私写真」の流れを受け継ぎつつ、よりその陰翳を濃くして、生(性)と死とのコントラストを強めた原の写真の世界が、この頃からすとんと腑に落ちるようになったのだ。その後の彼が『常世の虫』(蒼穹舎、2013年)、『天使見た街』(Place M、2013年)と力作の写真集を次々に刊行しながら、旧作の「ストリッパーもの」も精力的に発表してきたことには、本欄でもたびたび触れてきた通りである。
今回のPOETIC SPACEでの展覧会には、写真集に使用された写真に未発表の1点を加えた17点が並んでいた。その意味では、それほど新鮮味のある展示ではないが、どちらかといえば若い写真家たちにスポットを当ててきたギャラリーでの企画展であることは注目してよい。つまり、原の仕事がこれまでの自主運営ギャラリーを中心とした展示から、大きく広がりつつあることのあらわれといえる。実際に、写真展の会期中にはスイスのギャラリーからの問い合わせがあったそうで、次はヨーロッパやアメリカでの本格的な展覧会につながっていくのではないだろうか。
会場で、1978年に自費出版した原の最初の写真集『風媒花』を購入することができた。被写体に向ける眼差しのあり方は、この頃からほとんど変わっていないのだが、じわじわと眼に食い込んでくる浸透力は確実に増している。こうなると、もっと大きな会場で、1970年代以来の彼の作品をまとめて見たくなってくる。

2014/10/03(金)(飯沢耕太郎)

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