2021年11月15日号
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artscapeレビュー

アレキサンダー・グロンスキー

2014年11月15日号

会期:2014/09/06~2014/11/15

YUKA TSURUNO GALLERY[東京都]

アレキサンダー・グロンスキーは1980年、エストニア・タリン生まれの写真家。今回の展示は、2000年代以降にロシア写真の「ニュー・ウェーブ」の旗手として国際的な注目を集める彼の日本での初個展になる。
グロンスキーはもともとフォト・ジャーナリストとして活動していたが、2008年頃からよりパーソナルな視点の風景写真に転向し、アートの領域で注目されるようになった。広大な大地にぽつりぽつりと点在する建築物や人間の姿を、距離をとってクールに描き出し、人間の営みを環境の側から照らし出していく視点は、1980年代以降のヨーロッパやアメリカの写真家によく見られる傾向である。いわば遅れてきた「ニューカラー」、あるいは「ベッヒャー派」といえるだろう。とはいえ、氷に穴を穿ったプール(ロシア正教の洗礼の場所)やダイナマイトの空き箱が散らばった鉱山など、ロシア以外にはおよそ考えられないようなシーンも的確に押さえており、とてもバランスのとれた作品として成立していた。
今回の展示は「less than one」(1平方キロに1人以下という人口密度の低い地域のドキュメント)、「the edge」(モスクワ郊外の雪景色)、「pastoral」(モスクワと田舎の中間領域の風景)の3シリーズから抜粋された10点である。やや同傾向の作品ばかりが揃った印象があるが、今後はさらに多様なアプローチを展開できそうな可能性を感じる。グロンスキーに続くロシアの若手写真家たちの展示もぜひ見てみたい。なお、展覧会にあわせて、写真集『LESS THAN ONE』(TYCOON BOOKS)が刊行されている。

2014/10/08(水)(飯沢耕太郎)

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