artscapeレビュー
ザハ・ハディド
2014年11月15日号
会期:2014/10/18~2014/12/23
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
ザハ・ハディドって、語感からしてなんかソリッドでスピード感あふれる名前だと思うのは、作品を知ってるからだろうか。いや、作品を知らなくてもタダゴトではない響きがあるんじゃないかと思う。実際タダゴトじゃないんだけど。なにしろイラク出身の女性建築家というだけでタダゴトではない。さぞかし逆風が吹いたであろうことは、彼女の設計案がなかなか実現されず「アンビルトの女王」と揶揄されていたことからもうかがえよう。でもそういってしまうと彼女を過小評価することになる。なぜなら彼女が受け入れられなかったのは出自によるものではなく(たぶん)、奇抜きわまりないそのデザインによるところが大きいからだ。そのドローイングを見ると、ガラスの破片が飛び散ったような破壊的イメージや、UFOを思わせる流線型を多用した超未来的形態など、ある種の人たちの「萌え」は誘発するけれど、あえて建つことを拒否してるんじゃないかと思わせるような挑発的なプランばかり。でも恐ろしいことに20年ほど前から少しずつ建ち始め、ここ10年ほどは世界中から引っ張りダコになっているのだ。技術的にも趣味的にも時代が追いついてきたというべきなのか。東京でも神宮外苑の新国立競技場のコンペに勝ったものの、あまりに景観や歴史的文脈を無視した巨大さと奇怪なデザインに、建築家からも反対の声が上がったことは記憶に新しい。その新国立競技場案を含め、30年におよぶ仕事をドローイングや設計図、マケットなどの出展。展示がすでにインスタレーションになっている。それにしても10年間に1件も建てられなくても妥協しないって、ふつうできないですよそんなこと。
2014/10/14(火)(村田真)