artscapeレビュー
堀浩哉 展「起源」
2014年11月15日号
会期:2014/10/18~2014/11/09
多摩美術大学美術館[東京都]
多摩美教授だった堀の退官記念展。最初の展示室は70年代のインスタレーションとパフォーマンスの再現(どちらの用語も当時まだ流通してなかったが)。床にぐしゃぐしゃにした新聞紙を敷き、壁には「REVOLUTION」という言葉を文章に挟んだ紙を貼り、その手前にグルッと木枠を立て、一部に白い布をかけている。そのなかで行なわれた堀ともうひとりのパフォーマンスの映像も流されていて、布を動かしながら「走れ!」「レボリューション!」「勇気!」「レボリューション!」「元気!」「レボリューション!」と掛け合いをやっていくのだが、これがナンセンス劇のようでおかしい。展示のほうは、高校3年のとき富山県展に出した油絵に始まり、多摩美闘争時代の《鑑賞を拒否する》、パフォーマンスの記録写真、3原色を用いた「プラクティス」シリーズを経て、80年ごろから始まる抽象表現主義的なタブローに移行していく。大作絵画は壁に1、2点だけ飾り、小品やドローイングは壁一面を埋め尽くすようにびっしり並べている。全体に簡潔で、説得力のある展示になっている……のだが、なにか足りない気がする。説得力があるのに足りないのではなく、むしろ説得力があるからこそウンウンとうなずいてしまい、そこになにか大切なものが抜け落ちてしまってる気がするのだ。高校時代は自分の描いた絵に納得できず、大学に入って「自己埋葬儀式」を行ない、闘争に身を投じたものの絵筆は折らず、絵画を解体して1から再構築し、やがてモネの晩年の絵に出会って描くことに没入していく……。展示を見ると、そんなひとりの画家の紆余曲折に満ちた歩みが、たった4室の小さな美術館のなかで30分ドラマのごとく完結してしまっているように見える。そこに違和感を覚えるのだ。しかも、そこが闘争で中退したものの30数年後に教授として迎えられた多摩美の退職記念展という場であってみれば、なおのこと「めでたしめでたし」で終わってはならないだろう。もっと大きな会場で、すべての作品を見てみたくなった。
2014/10/27(月)(村田真)