2021年12月01日号
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artscapeレビュー

瀧浦秀雄「東京物産」

2010年09月15日号

会期:2010/07/31~2010/08/10

コニカミノルタプラザ ギャラリーC[東京都]

10年あまりの時間をかけて、東京23区内を隈なく歩きまわり、目についた「物」を6×6判の二眼レフカメラで丁寧に採集していく。東京で見つけた「物」だから「東京物産」というわけで、2007年に発表された人物スナップのシリーズ「東京体」と対になる作品である。なお、既に写真集『東京体』(ギャラリーバルコ)が刊行されており、今回の展示にあわせて刊行された写真集『東京物産』(同)とともに、ダンボールのケースに2冊組でおさめられるように造本されている。写真撮影、プリントのプロセスと同様に、本作りにおいても瀧浦の仕事は実に丁寧で用意周到だ。
さて、今回のシリーズに関していえば、赤瀬川原平らの「トマソン」=路上観察学の成果とどこが違っているのかということになる。基本的には両者にそれほどの違いはないのだが、瀧浦の作業の方が方法論的に厳密で、その採集の基準がクリアーであるといえるかもしれない。展示されている写真のクオリティが見事にそろっていて、まったく揺るぎがないのだ。おそらく膨大な量の写真が切り捨てられているのだろうが、そのことによってある時代区分における「東京物産」のスタンダードが、きちんと確立しているように見える。
やや個人的な感想ではあるが、瀧浦の写真を見ていると「きのこ狩り」によく似ているのではないかと思った。「きのこ狩り」も経験を積んで「きのこ目」ができてこないと、なかなか大物は見つからない。カメラを手にした禁欲的な歩行の積み重ねによって、普通の人なら何気なく見過ごしてしまう光景の中から「東京物産」がすっと浮かび上がって見えてくるのだろう。そういえば、ある特定の「物」が増殖して、そこら中に生え広がっているような写真がけっこうたくさんある。そのあたりも、どこかきのこに似ているようだ。

2010/08/05(木)(飯沢耕太郎)

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