artscapeレビュー
東大門デザインプラザ&パーク
2010年09月15日号
[ソウル]
ザハ・ハディドによるソウルの東大門近くの巨大なデザイン施設の開発計画。もともと東大門運動場があった約65,000平米の敷地に、ザハの流線型のデザインが展開する。東大門はファッション産業で知られていたが、近年は中国からの格安衣料品の流入などによって、その不振がつづいていた。そこでデザイン産業との複合によって、活性化が図られたという。現在、一部が完成しており、カフェや屋上庭園などに入ることができる。ところでこのプロジェクトに対し、ザハの過去のアンビルド・プロジェクトを知るものからの否定的な意見も聞いた。いわく、パースペクティブをずらし、歪ませ、鋭角的なラインによって調和を撹乱するデザインをしていたはずの彼女が、ここでは環境やランドスケープと調和した建築をつくっており、過去の挑発的だったデザインが見られないのが残念だと。確かに、少なくとも鋭角的なラインではなく、流線的なラインが全体に貫かれているし、知覚に不快を与えるようなデザインではない。とはいえ、筆者は実際に見学をして、その種のコンセプトとデザインの不一致といった疑問は特に感じなかった。まず何よりスケールが巨大であり、同じ戦略とコンセプトで建築をつくれるような状況ではないだろう。また流線型が持つ少しずつ風景が変化していくかのような効果は、むしろこれくらいの巨大なスケールにおいてうまく機能しているようにも感じられた。
2010/08/05(木)(松田達)