artscapeレビュー
126 POLAROID──さよならからの出会い
2010年09月15日号
会期:2010/08/07~2010/08/29
横浜美術館 アートギャラリー1[神奈川県]
2008年のポラロイドフィルムの発売中止の一報に反応して企画された「さよなら、ポラロイド」展。当初は多摩美術大学の萩原朔美の研究室を中心にした50人あまりの参加者だったのだが、東京、京都、大阪と展示が巡回する間に人数が増えて、今回の横浜展では126人に達した。その間に、サミット・グローバルという会社がポラロイドフィルムを再生産することになり、それにともなってタイトルも「126 POLAROID──さよならからの出会い」に変わった。
荒木経惟、石川直樹、石塚元太良、沢渡朔、島尾伸三、杉本博司、津田直、港千尋、森山大道、屋代敏博、若木信吾──出品者の中から目についた写真家の名前を50音順に並べてみただけでも、なんとも多彩で、スリリングな顔ぶれである。ポラロイドという表現手段にもともと備わっていた撮影者を「エキサイトさせる力」が、多くの人たちを動かしているということではないだろうか。実際に展示を見ると、その表現スタイルの多様性、何が出てくるかわからないワクワク感は驚くべきものがある。ポラロイドの魔法の力は、まだまだ衰えていないということだろう。
同時に開催されていた、20×24インチの大判ポラロイド作品の特別展示もかなり面白かった。1983~86年にかけて、重さ90キロ、高さ1・5メートルという巨大カメラを使って、石内都、石元泰博、植田正治、川田喜久治、内藤正敏、奈良原一高、深瀬昌久、藤原新也、森山大道ら17人の写真家たちが取り組んだプロジェクトの成果である。実にひさしぶりに石内都の「同級生」や深瀬昌久の「遊戯」などのシリーズを見ることができたのだが、ここでも写真家たちがポラロイドの表現能力を最大限に活かした「プレイ」を全身で楽しんでいる。もし、この巨大ポラロイドのシステムがまだ使用可能ならば、若手作家が再チャレンジするというのもいいかもしれない。なお、赤々舎から刊行された本展のカタログを兼ねた写真集『126 POLAROID──さよならからの出会い』も盛り沢山の、なかなか充実した出来栄えだ。
2010/08/13(金)(飯沢耕太郎)