artscapeレビュー

梅佳代「ウメップ」

2010年09月15日号

会期:2010/08/07~2010/08/22

表参道ヒルズ スペース オー[東京都]

梅佳代の5冊目の写真集『ウメップ』(リトルモア)の刊行にあわせた「シャッターチャンス祭りin うめかよひるず」。夏休み中ということもあって、家族連れ、若い観客で大賑わいだった。ポピュラリティという点からいえば、彼女の存在感は若手写真家たちの中でも際立っているといえるだろう。
等身大の切り抜き写真が乱立し、「毎日撮った写真の壁」(会期中にもどんどん増えていく)、「TVの部屋」(ビデオ作品の上映)、記念写真のコーナーなどもあって、会場全体の雰囲気が村の夏祭りと化していた。作品の内容からいえば、デビュー作の第32回木村伊兵衛写真賞受賞作『うめめ』(リトルモア, 2006)の延長上で、まったく新味はない。ただ、笑いのツボをピンポイントでヒットする確率はより上がっている。
梅佳代のようなやり方を、携帯電話の写真の時代にふさわしいスナップの現在形として評価するか、俗悪な退化として否定するのかというのは微妙な分かれ道だろう。僕はどちらも不毛のような気がする。このような写真を撮り─撮られることの歓び、できあがった写真を前にして、いろいろ言い合って反応を愉しむようなあり方は、写真が発明されてからずっと続いてきた伝統的な行為ともいえる。梅佳代の写真の「語り部」としての能力は群を抜いており、まだしばらくは「シャッターチャンス祭り」を盛り上げていけそうだ。

2010/08/11(水)(飯沢耕太郎)

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