artscapeレビュー
溝尻智哉 個展
2010年09月15日号
会期:2010/07/27~2010/08/01
アートスペース虹[京都府]
大きな布にパステルで描かれた線描画。一見、抽象にも思えるが、モチーフはかつて作家が滞在していた中国の風景で、床に敷いた布の上に乗り、画面全体をできるだけ見ずに描いている。描くうちに最初の意図に「ズレ」がうまれたり、思いがけない無意識のイメージが引き出されていくことが面白く、縒れてしまう伸縮性のある布をあえて用いて不自由な状態で描いているのだという。色も少なくシンプルだが、パステルの鈍い色やザラザラとした質感、力強い筆致による煤け具合が、すがれた景色への想像を喚起して強く印象に残る作品だった。
2010/08/01(月)(酒井千穂)