artscapeレビュー
江本創「幻ノ進化論──Saltationism」
2010年09月15日号
会期:2010/07/20~2010/08/26
京都芸術センター[京都府]
想像上の物語をつうじて“幻獣”たちを創り出す、美術作家・江本創の個展。江本の作品である“幻獣”たちが標本としてずらりと展示された空間は、子どもでなくてもその想像的な世界に誘い込まれてどっぷりと浸ってしまう魅力に満ちていた。甲羅をもつ獣や虹色の魚、小さなドラゴンなど、展示された一体一体の“幻獣”のユーモラスで不気味な形相、ユニークなネーミングもさることながら、なにしろそれぞれの骨格や皮膚の生々しい質感は、本当に作り物なのかと思うほどリアルで目を釘付けにするのだ。世界中に密かに棲息する未確認の奇妙な生き物を追い求めるアレクサンドル・ヒロポンスキー博士の助手として世界中を巡る江本が、各地で発見して持ち帰ったという物語の設定から制作される“幻獣”(の“死骸”)は、それぞれが棲息していた環境などにも見る者の想像を巡らせて、次々と好奇心を掻き立てる。会場から離れ難い気分にもなってしまうのが危険でもあるが夏休み企画にふさわしい展覧会だった。
2010/08/17(火)(酒井千穂)