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artscapeレビュー

藤本壮介展 山のような建築 、雲のような建築、森のような建築 建築と東京の未来を考える2010

2010年09月15日号

会期:2010/08/14~2010/11/28

ワタリウム美術館[東京都]

藤本壮介による初個展。ワタリウム美術館の2階から4階までの3フロアを用いた展示は、どの階も所狭しと展示物が並べられており、展示にかける圧倒的な気迫が伝わってくる。2階はポリカーボネートの押出材を組み合わせた、雲をモチーフとしたひと続きの構築物。初期の《N House》が垂直に展開したかのような透明で内も外もない空間が生まれている。3階は事務所設立以前から現在までの作品が、模型、ドローイング、写真などによって展示されており、それらが「山のような建築、雲のような建築、森のような建築」と再定義されている。この階の展示は包括的で、藤本のこれまでの軌跡の全体像を知ることができる。特に各プロジェクトに小さな字で書かれた警句的なテキストは、藤本の思考を知る指針となり、展示の重要なスパイスとなっている。藤本がここで自身の活動を「山」「雲」「森」という三つのモチーフによってまとめていたことは示唆的だと考えられる。例えば、この中に『20XXの建築原理へ』(INAX出版)で挙げられていたような「樹木」や、やはりよくモチーフとして挙がる「洞窟」は入っていない。「山」「雲」「森」は、より何か大きな自然の幾何学を示している。あえて建築的な言葉に訳せばさしづめ「量塊」「無重力」「迷路」とでも翻訳できるだろうか。そこには建築をその内側に入り込み空間の次元で追い求めるのではなく、建築をその外側に回り込みメタファーの次元で追い求めるような藤本の思考が表われているように感じた。4階は発泡スチロールでつくられた青山一帯の都市模型で埋め尽くされており、ヴォリューム一つひとつが下部からスチールの支柱によって支えられることにより、既存の都市が雲のようにたなびくとともに、その中に「山のような建築」と空中に浮かぶ「空中の森/雲の都市」という二つのプロジェクトが置かれている。ところで、今回のこれらすべての展示に共通するテーマを上げるとすれば「雲=クラウド」ではないか。建築がその存在を単に弱めて消失していくのではなく、雲のような存在感へと変化することにより、瞬間ごとに多様な建築へと姿を変えることのできるような、そんな状況から藤本の建築が生まれているようにも思えた。いわば「クラウド化する建築」とも言えるような思考法が藤本の建築の背景にあるかのように感じた。

2010/08/14(土)(松田達)

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