artscapeレビュー
でらa展
2010年09月15日号
会期:2010/08/22
大同大学白水製図室[愛知県]
愛知県の建築・インテリア系学生団体ゼロワンの主催による、大学3年生のための合同設計展と講評会。「でら」は名古屋弁で「とても」を意味する語であり、「a」にはarchitectureの「a」と「よい」という意味の「ええ」が掛けられているという。建築の合同卒業設計展は、特にここ数年各地域によって盛んに行なわれている。一方、4年生の最後を飾る卒業設計以前に合同で行なう展覧会はまだ多くはないが、少しずつ現われてきている。2009年から関西において建築新人戦がはじまったことが、おそらくひとつのきっかけだったと言えるかもしれない。2010年3月には南洋堂書店のN+ギャラリーにおいて、建築女子による「私たちのアトリエ…女子だけ?!」展が行なわれた。当時大学3年生だった7人のメンバーによる展示であり、それぞれ異なる課題に提出した作品が集められて展示がなされた。なお、それゆえそれらをまとめる「建築女子」というキーワードの是非について議論が巻き起こった。「でらa」展もこの流れに位置づけられるのではないか。学生団体が主催している点で建築新人戦と異なり、また門戸を広く開放し、全国から作品を集めているという意味で、もちろん建築女子とも違う。3年生の展示であるが、運営のメインはゼロワンの4年生というところが面白い。通常は、上級生のために下の学年の学生が準備をするということになるが、このイベントでは逆に一度準備をしてもらった側の学生が、翌年下の学年に恩返し的に会をつくりあげることになり、このような順序の逆転がどのような方向性につながるのか、興味深い。講評会の審査員は、宇野享(大同大学)、橋本雅好(椙山女学園大学)、北川啓介(名古屋工業大学)の3者であったが、北川氏の都合により、急遽筆者が審査員として加わることとなり、一部始終を見ることができた。愛知県内からの作品に加え、沖縄から仙台まで全国からの応募があり、初回として、素晴らしいスタートであった。ほかに似たようなイベントのない8月という時期設定もよかった。作品としては、名古屋工業大学が圧倒的なプレゼン密度を持っていたことが印象的であったが、インテリアやアイディアコンペ的な作品も同時に寄せられており、そのため一元的な審査基準では対応できないところが、逆に今後の多様な審査基準の可能性を示しているようにも思われた。来年以降のさらなる盛り上がりが楽しみである。
2010/08/22(日)(松田達)