artscapeレビュー

三宅砂織 展「Image castings 2&3」

2010年09月15日号

会期:2010/07/09~2010/08/06

複眼ギャラリー[大阪府]

三宅砂織の新作展。印画紙の上に直接物を置いて感光させるフォトグラムの作品は以前から発表されていたし「VOCA展2010」や「ART OSAKA 2010」などでも目にしていたのだが、どちらかというとこれまでは、フィルムに描いた絵を何枚も重ねて制作するこの技法の不思議な空間的奥行きや、光と影がつくる像の、儚気でファンタスティックなイメージに注意を引きつけられていた感がある。しかしながらそれだけではなく、絵も上手い人なのだと改めて三宅の描く絵の魅力を感じた今展。描かれた建物や木などの背景は、はじめは写真が張り付けられているのかと思ったほど細密に表現されていて、ぴたりと時間が止まっているかのようだ。そこに、線で描かれた後ろ姿の少女たちがレイヤーで重なるようなイメージで、異なる時間がひとつの物語を紡ぎ出すような、重層的で立体的な世界を繰り広げていた。少し妖しげな雰囲気をもちながら、幻想的な物語を連想させる三宅の作品世界を堪能できたのが嬉しい。

2010/08/07(土)(酒井千穂)

2010年09月15日号の
artscapeレビュー