2019年09月15日号
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artscapeレビュー

2012年05月15日号のレビュー/プレビュー

佐内正史「ラレー展」

会期:2012/04/06~2012/05/06

NADiff Gallery[東京都]

佐内正史の本領発揮というべき写真展だ。「ラレー」というのは佐内の造語で、「ラーメン+カレー」のこと。いうまでもなく、展示されている作品にはすべてラーメンとカレーが写っている。それも衒いなく、まっすぐに、ラーメンの丼とカレーの皿を画面の真ん中に置いて、射抜くように撮影した写真ばかりだ。ここ2年ほど、都内を中心にラーメン屋やカレー屋に通い詰めて撮影したようだが、店内が少し暗いので、「ピントが一点にしか合っていない」ものが多い。だが、そのことが逆にラーメンとカレーそのものの存在感を強め、見る者を引きつける不思議な魅力を発しているように感じる。
佐内には『俺の車』(メタローグ、2001)という写真集がある。買ったばかりの愛車、黄色いスカイラインを、さまざまな場所で前後、左右、上下から撮影した写真をまとめたものだ。「これが好きだ」「これが撮りたい」という彼の思いがストレートに伝わってくる。子どもっぽいといえばそれまでだが、佐内が手放しで被写体に向かうときの純真無垢な衝動が、『俺の車』にも今回の「ラレー」シリーズにもあふれ出している。そんなときの彼は無敵だ。しばらくこういう一点突破の写真を見ていなかったので、とても新鮮だった。佐内にとっての「原点回帰」といえるのではないだろうか。
なお、佐内自身が主宰する「対照」レーベルとMatch and Companyの共同出版で写真集『ラレー』も刊行された。前作『パイロン』の続編にあたる写真集だが、すっきりした造本で気持ちよく仕上がっている。

2012/04/06(金)(飯沢耕太郎)

ユベール・ロベール─時間の庭

会期:2012/03/06~2012/05/20

国立西洋美術館[東京都]

まず日本において、ユベール・ロベール展が開催されたことが感慨深い。18世紀の廃墟趣味に感化されつつ、そこに当時の人々のふるまいを添え、自ら絵のような造園も行なった画家である。時間の想像力を付与した世界の表現は、まさに「時間の庭」というタイトルどおりの内容だろう。大友克洋やF. Schuitenの建築的な絵、あるいは廃墟の表現が好きな人にも、おすすめの内容である。

2012/04/06(金)(五十嵐太郎)

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ひっくりかえる展

会期:2012/04/01~2012/07/08

ワタリウム美術館[東京都]

Chim↑Pomのキュレーションで、ロシアのヴォイナ、フランスのJR、カナダのアドバスターズ、そして日本からはChim↑Pomのほか、「原爆の図」の丸木位里・俊、福島原発の「指さし作業員」竹内公太らが出品。こうして名前を並べただけでもよく実現したもんだと感心するような、ストリートアートと反原発・反核の展覧会。まあ日の目を見なかった目黒の「原爆展」と違って、こっちは勢いだけでヤリ倒した感は否めないが(なにしろ準備期間は半年たらず)。したがって展示はかなり乱暴だし、そもそもストリート系のアートを美術館に展示することの是非も問われなければならないが、そのことも含めて問題提起的な展覧会になっていた。この日はヴォイナのメンバー、アレクセイ・プルツセル・サルノがロシアでの活動を紹介。パトカーをみんなで寄ってたかってひっくり返したり、KGB本部前の跳ね橋が上がる直前に巨大なペニスの絵を描いてKGBに見せつけたり、きわめて挑発的、というより端的にいって犯罪そのものじゃないか。実際メンバーのふたりは逮捕監禁されてるそうだ。アレクセイの発言、「ロシアの内務省では100パーセント汚職が行なわれているが、だれも改革しようとしないのでわれわれがしている。改革とはひっくり返すことだ」「牢屋に入ることはもっともすばらしい贈り物だ。なぜなら国家がわれわれの活動を認めてくれたわけだから」。はたしてアレクセイは無事帰国できたんだろうか……。

2012/04/07(土)(村田真)

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シンポジウム「small music──ロルフ・ユリウスのアートの世界」(スモール・ミュージック──ユリウス追悼展)

会期:2012/04/07

京都国立近代美術館[京都府]

前日にアートスペース虹で開催中の追悼展を見に行ったのだが、シンポジウムにも多くの人が集まっていた。音楽学者の中川真氏がコーディネイター、パネリストはロルフ・ユリウスをよく知るサウンドアーティストの鈴木昭男、ユリウスとの共同作業を行なったことのあるフィールドレコーダーのかわさきよしひろ、ディレクターの藤島寛、娘でありキュレーターのマイヤ・ユリウスの4氏。各パネリストから順番にユリウスの作品コンセプトや発表にまつわるエピソードなどが語られ、その活動のあり方を通じた魅力が紹介、議論された。「押し付けがましくなく、耳をそばだてることを求める」という言葉が展覧会のチラシには記載されていたのだが、「静寂」や「不在」から音を引き出すその創作活動と、「日本人よりも日本人らしい」といわれていた彼が完璧な日本庭園は好まなかったという話がつながり、より作品や作家の姿勢を理解できた気がする。微妙、微細、曖昧といった不安定な要素がどこかに感じられる、または感じるからこそ〈small music〉というコンセプトにつながるのだと理解した。彼のファンが多いのも頷ける。

2012/04/07(土)(酒井千穂)

「にほんのいえ」展

会期:2012/03/24~2012/04/08

堂島リバーフォーラム 4Fギャラリースペース[大阪府]

おなじみの藤村組に、U-30組が合流したような若手建築家のセレクションである。模型を整然と並べていくオーソドックスな住宅の展覧会だ。知らないプロジェクトは情報として勉強になった。ただし、実作と計画案が混ざっていること、展覧会タイトルとセレクションの関係がほとんど説明されていないことなどは気になった。

2012/04/08(日)(五十嵐太郎)

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