2019年09月01日号
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artscapeレビュー

2012年05月15日号のレビュー/プレビュー

草間彌生 永遠の永遠の永遠

会期:2012/01/07~2012/04/08

国立国際美術館[大阪府]

最終日だけに、さすがの集客力を見せつけられた。現代美術でこれだけ多くの人を呼ぶことができるとは。今回はクサマトリックス展のようなアート的な空間を展示室内につくるよりも、手で描く作品の大量陳列によって作家の本領を発揮していた。上下も絵をぎっしりと並べる前近代的な方法で壁を埋めつくす。もはや前衛というより、その圧倒的にポジティブな存在感に笑うしかない。すごい。常設展では草間にあわせ、女性作家を中心に構成していた。

2012/04/08(日)(五十嵐太郎)

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311

会期:2012/03/03

ユーロスペースほか[東京都ほか]

被災地に出向いた森達也らの映画『311』を見る。完成度の高い作品とは言い難いが、そもそも3.11のドキュメンタリーで成功するとは何なのか? いや面白くてよいのか? という問いを与えることに大きな意味をもつ。これがいわゆる普通の被災地のドキュメントではなく、取材者側自体のドキュメントであることは、放射線量にびくびくしながら行動する、とくに前半の福島エリアのドタバタがよく示していた。逆に後半は普通のドキュメントに近づき過ぎていたかもしれない。

2012/04/08(日)(五十嵐太郎)

「Googleアートプロジェクト」記者発表会

東京国立博物館[東京都]

初めてグーグルの「アートプロジェクト」を見たときは驚いた。グーグルマップの「ストリートビュー」のように世界中の一流美術館の展示室をザックリ見て回ることができるし、特定の作品は細部まで拡大してつぶさに観察することができるからだ。これだよこれ、インターネットでいちばんほしかったのはこういう機能なんだよなあと喜んだものだ。そのアートプロジェクトに東京国立博物館をはじめ、国立西洋、ブリヂストン、サントリー、大原(岡山県)、足立(島根県)の各美術館も加わることになった。と聞いても正直あまりうれしくない。なぜならこういう機能は行きたくても行けない美術館だからこそ価値があるんだし、細部まで見る価値のある作品だからこそ拡大してみたくなるもんだからな。日本にそんな美術館やコレクションがはたしてどれだけあるか?

2012/04/09(月)(村田真)

大友克洋GENGA展

会期:2012/04/09~2012/05/30

3331アーツ千代田[東京都]

スタジオジブリや『ワンピース』など、近ごろ美術館やギャラリーでのマンガの原画展が流行ってる。しかも美術展などに比べてケタ違いの大量動員に成功しているのだから困ったもんだ。本来マンガというのは雑誌などに複製されたかたちが完成品だから、原画は見せるべきものではないはず。もちろん、いつも複製に親しんでいるからこそ読者は原画を見てみたいと思うのだし、そもそも大量の複製が完成品だから大量動員もできるのだが、でもそれじゃ1点制作の美術の立場がないでしょ。つーか美術の立場なんかとっくにないのだが。ともあれ、大友はほかのマンガ家に比べて圧倒的に絵がうまいので原画展も一見の価値がある。とくに今回は代表作『AKIRA』の原画2,300点を並べた展示が見もの。原画そのものもさることながら、シンプルな陳列棚はまるで博物館のようなインスタレーションだ。また、『童夢』に出てくる超能力で凹ませた壁が立体的に再現され、その前で記念撮影できるというのも笑える。実はこの原画展、宮城県出身の大友が東日本大震災へのチャリティとして企画したたもので、入場料収益の30パーセントを被災地復興に役立てる意向だ。大量動員できるマンガ展の最良の有効活用といえる。なお同展は日時指定の完全予約制。

2012/04/09(月)(村田真)

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青木恵美子 展──沈黙の終わりに

会期:2012/04/09~2012/04/14

藍画廊[東京都]

大作絵画数点の展示。どれも画面の8割方が赤く塗られ、下方からはニュアンスに富んだ青や緑が滲出している。逆に大半が青く、下端だけ赤かったら風景を予想できるが、これはなにものも予想できず、抽象と呼ぶしかない。作品そのものは2月に名古屋の「アーツチャレンジ2012」でも見たが、このように同系色の絵を壁も床も天井も真っ白い空間に置くと、とてもよく映える。絵画はいつ、どこに、どのように展示しても絵画そのもの(内容)は変わらないが、見え方は大きく変わることがある。そのため晩年のマーク・ロスコはうるさいほど展示に口をはさんだという。これはもはや展示の域を超えた「絵画のインスタレーション」と呼ぶべき事態だろう。青木も絵の内容と同等のエネルギーをインスタレーションに注げば、新しい地平が開けるかも。

2012/04/10(土)(村田真)

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