2021年09月15日号
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artscapeレビュー

2012年12月15日号のレビュー/プレビュー

神話のことば ブラジル現代写真展

会期:2012/10/27~2012/12/23

資生堂ギャラリー[神奈川県]

資生堂ギャラリーでは、これまでフィンランドとチェコの写真家たちの作品を紹介する展覧会を、それぞれ2009年と2010年に開催してきた。今回のブラジルの現代写真家、映像作家たちによる展示は、その連続展の第二弾ということになる。サンパウロ在住のインディペンデントキュレーター、エーデル・シオデットの企画によって、クラウディア・アンデュジャール、ルイス・ブラガ、ホドリゴ・ブラガ、ジョアン・カスティーリョ、エウスタキオ・ネヴェス、ケンジ・オオタの6名と、写真家ユニット、シア・デ・フォトの作品が展示された。
ブラジルは歴史的にも多様に引き裂かれた国であり、「ブラジル写真」の輪郭を指し示すのはかなり難しい。菅啓次郎が『花椿』(2012年12月号)に寄せたエッセイ「生きることを呼びかける『混血の国』の神話」で指摘するように、「ブラジルは一つではない。先住民のブラジル、植民者のブラジル、アフリカ系の人々のブラジル、さまざまな移民グループのブラジル。北と南、東と西が対立し、あらゆるレイヤーが重ねられ」ているのだ。それでも、今回の出品作家の作品を見ると、共通の要素として神話的な想像力への親和性があげられるのではないかと思う。たとえばクラウディア・アンデュジャールの矢の真美続の末裔たちを撮影した「見えないもの」「Reahu」といったシリーズや、エウスタキオ・ネヴェスの古写真を使用したコラージュ的な作品に色濃く表われている魔術的な時空間への傾きは、ルイス・ブラガのような都市を撮影する写真家の作品へも浸透してきている。日系二世のケンジ・オオタの岩や植物の表層を薄く引き剥がして重ね合わせていくような作品や、ホドリゴ・ブラガのひたすら地面を掘り続ける男を撮影した映像作品も、どこかシャーマニズム的な行為の痕跡のようだ。
彼らに日本の聖地を撮影してもらうような機会があれば面白いかもしれないと思った。この資生堂ギャラリーの連続企画も、そろそろ相互交流を本気で考えるべき時期にきているのではないだろうか。

2012/11/13(火)(飯沢耕太郎)

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大岩オスカール──Traveling Light

会期:2012/11/14~2012/11/26

渋谷ヒカリエ8階キューブ[東京都]

オスカールが東京都現代美術館で個展を開いたのは2008年というから、4年ぶりに見る新作展だ。作品は(本人も)ぜんぜん変わってない。マンネリに陥るのでも自己模倣にハマるのでもなく、ひたすら描き続けているらしい。相変わらず東京ともニューヨークともサンパウロともつかない都市や郊外やジャングルの風景に、判じ絵やダブルイメージなどの遊び心を加えて寓意性を高めているが、同時に、いやそれ以上に色彩と筆触の醸し出す絵画性にも注目したい。たとえば、都市の片隅や森林の枝葉など主題から外れた部分の描写。彼はそんなどうでもいいような細部を義務的に処理するのではなく、むしろ中心主題より画面の端っこにこそ描く喜びが宿るといわんばかりに奔放に筆を走らせる。それが鑑賞者にも伝わるから見ていて楽しいし、そこにオスカールの真骨頂があると思う。

2012/11/14(水)(村田真)

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石巻市立湊小学校避難所

映画『石巻市立湊小学校避難所』を見る。震災後の7カ月間、ある意味で小学校が急きょ集合住宅にリノベーションされた日々の記録だ。人々が肩を寄せ合い、大きな家族が形成され、仮設住宅に移ることでまた去っていく。テレビで放映されないような本音も聞かれて興味深い。仙台で見たのだが、劇場にいる観衆の雰囲気が東京とまるで違う。

2012/11/14(水)(五十嵐太郎)

来往舎現代藝術展9 インスタレーションワークショップ「ことばの森」

会期:2012/11/15~2012/11/21

慶応義塾大学来往舎ギャラリー[東京都]

近藤幸夫ゼミの学生有志で企画・運営される来往舎現代藝術展、9回目の今年はミヤケマイによる言葉を使った参加型の公開ワークショップが行なわれた。植木が置かれた会場には、参加者が書いた文がシリトリのように上から連なり、まさに「ことばの森」。昨年の「菅木志雄展」とはずいぶん違うなあ。それより床に敷きつめたオガクズ、掃除が大変そう。

2012/11/15(木)(村田真)

ソンエリュミエール、そして叡智

会期:2012/09/15~2012/03/17

金沢21世紀美術館[石川県]

金沢美術工芸大学での特別講義のため金沢へ。早めに着いたので21世紀美術館を訪れる。展覧会名の「ソンエリュミエール(Son et Lumi re)」は「音と光」の意味らしい(出品作家のピーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスにも同題の作品がある)。この春から開かれていた「ソンエリュミエール──物質・移動・時間」を第1章とし、第2章となる今回は「世の中の矛盾に正面から向き合い、立ち続けようとする人間の可能性を探る」のが趣旨。そのため「人間社会を鋭い眼差しで捉え、その膿みをあぶり出す。あるいは絶望自体も取り込み、半ば自虐的ともいえる手法で、それでも生き抜こうとする現代人の姿を映し出そうとする」アーティストを集めたという。引用すると楽だ。出品作家はフィッシュリ&ヴァイスのほか、最年長ゴヤから最年少Chim↑Pomまで14組。同館コレクションを中心とした出品なので見覚えのある作品が多い。初対面の作品では、ジェイク&ディノス・チャップマンがアドルフ・ヒトラーの水彩画に上書きしたとかいう作品に少し心を動かされた。

2012/11/16(金)(村田真)

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